血糖が下がった場合、糖尿病の人と低血糖症の人では対応が違うということ。
それから低血糖症の人が潜在的に多くいると予想されることがポイントです。
著書『砂糖をやめればうつにならない』から下記抜粋します。
●もしも血糖が下がったら:糖尿病の人のケース
もし、血糖が下がって気分が悪くなったなら、どうすればいいのでしょうか?血糖が下がった人が、糖尿病でインスリンを打って低血糖になったのか、それとも糖尿病でない人が甘いものを食べすぎて低血糖になったのかによって対処の方法がまったく違ってきます。
私が低血糖症の人にはじめて接したときのエピソードを紹介します。シカゴの菓大学でいつものように生化学の講義をしようとしたところ、20歳になったばかりの二年生の女子学生がやってきて、キャンディを食べてもいいかと許可を求めました。
「キャンディ?」私は聞き返しました。私が事の次第を理解していないことを察知した彼女は、こう説明してくれました。彼女が糖尿病のためにインスリン注射していること、やや打ちすぎたので血糖値が下がりすぎ、講義に集中できなくなる可能性が高いので、その際はキヤンディを食べて血糖値を上げるように医師から指示されていること。もちろん、私は彼女にキャンディを食べることを許可しました。
糖尿病患者は、インスリン・ショックがあらわれたとき、アメや甘いスナックを必要としますから、この対処法でよいのです。
●もしも血糖が下がったら:糖尿病でない人のケース
では、糖尿病でない人が甘いものをたくさん食べたことによって血糖が下がりすぎて気分が悪くなったなら、どう対処するのでしょうか?一般人も専門家もそうなのですが、低血糖の症状があらわれた人に砂糖やクイックカーボをもっと多く食べるようにアドバイスするのがよいと間違って信じています。この本を読んでいるあなたは、この考えが間違っていることがわかりますね。
ガイランド医師が患者だったときに、ある医師が彼を低血糖症と正しく診断しましたが、血糖を上げるために、キャンディや板チョコを勧めました。それで彼の症状がいっそう悪化したことは述べました。
糖尿病患者は、インスリン・ショックがあらわれたとき、アメや甘いスナックを必要とするのですが、低血糖症には違った治療法が求められるのです。低血糖症の人にさらに砂糖を食べるようにアドバイスするのは、原理的に間違っています。
まず第一に、低血糖症は食事に砂糖が不足しているから発症するのではありません。人体が砂糖をコントロールするしくみがうまく働かず、その結果、砂糖を食べた後に、 血液中のブドウ糖レベルが下がりすぎるのです。だから、治療法は、砂糖や甘いものを食べないことであることは明らかです。
でも、私たちは血糖が低いと、それを上げるために、コンビニでキャンディ、コーラ、 甘いスナックを購入して口にすればいいと自動的に思い、甘いものを食べてしまいやすいのです。これこそ、いちばんやってはいけないことなのです。
多くの人々が理解していないことは、甘いものを口にすると、低血糖の症状は一時的に改善するけれど、やがて甘いものを食べる前よりも悪化するということです。砂糖の多い食べものを排除するまで、根本原因は決して消え去りません。
●低血糖症は蔓延している
わが国では、低血糖症に苦しむ人はどれくらいになるのでしょうか?この病気に苦しむ最先端国のアメリカから学ぶのがよいでしょう。アメリカの専門家に同じ質問をすると、ある人たちが政治や宗教を語るときに熱くなるように、その意見は大きく二極に分かれます。
アメリカ医師会に代表される権威のある西洋医学のグループは低血糖症に強い疑いを 持ち、一方、統合医療(代替医療)グループは低血糖症を強く信じるのです。ニューヨークの競合医療医ロナルド・ホフマンは、こう言います。
「もし、あなたがふつうの医師に低血糖症について尋ねると、低血糖症はあまりに珍しいので、実際の症例に出くわすことはありませんという答えが返ってくるでしょう。試しに、次回、あなたが病院に行くとき、あなたの経験した症状が低血糖症によるものかと質問してみればよいでしょう。医師は、困惑するでしょう。怒りだすかもしれません。そして、あなたに精神科を紹介してくれるかもしれません。でも、本当のことをいえば、低血糖症は私たちが信じ込まされてきた以上に蔓延しているのです」
この意見に同意するのが、これまで数千人の低血糖症患者を治療してきたニューヨークの内科医リチャード・アシュで、つぎのように言います。
「低血糖症は珍しい病気ではありません。それどころか、蔓延しています。多くの人々が低血糖症にかかっているのですが、残念ながら、彼らはその事実を知りません。低血酒症こそがこの国に肥満を爆発させた張本人なのです。人々は血糖が下がると、お腹が空いて過食し、しかも食べるのをやめられないのですから」
低血糖症の患者数について、正確な統計データを知るのは困難です。とりわけ、アメリカ政府やヘルスケア組織からまともな統計データを得るのは不可能です。病気の世界共通ルールを作成するほどの権威を持つCDC(米疾病予防センター)は、低血糖症の存在そのものを認めていません。
たとえば、CDCのホームページにある健康トピックス欄には、トリインフルエンザ、 慢性疲労症候群、クラミジア、サルモネラなどが網羅的に載っていますが、低血糖症は掲載されていないのです。
低血糖症が掲載されていない理由を担当者は、低血糖症は糖尿病の関連事項であると説明しています。
医学関係の科学者が頻繁に使うのが、米国立医学図書館とNIH(米国立衛生研究所)が共同で運営するメドライン・プラスです。そのホームページには、低血糖症は約1000人に1人が発症する病気であると書かれています。
もし、この数値が本当なら、人口約3億人のアメリカには低血糖症の人が50万しかいないことになります。多くの医学研究者の感想は、アメリカでは肥満と甘いものや精製カーボの過剰摂取が爆発的に増えていることから、この数値はあまりに低すぎて、笑い話にしか聞こえないというものです。
では、本当のところ、アメリカでは人口のどれくらいの割合が低血糖症なのでしょうか? ロサンゼルスの統合医療医ケイス・デオリオは、豊富な治療経験から低血糖症は人口の50パーセントに達すると主張します。
アメリカ人の半分が低血糖症というのは信じられないかもしれません。でも、興味深いことに、今から50年近く前の1966〜67年にかけて保健・教育・福祉省は、一般家庭への戸別訪問調査を行い、ほぼ同じ数値の49.2パーセントが低血糖症であったことを、ダフティは『シュガー・ブルース(砂糖病)』の中で述べています。
アメリカでは低血糖症が蔓延していることがわかります。たぶん、日本における低血糖症もアメリカの状況に近いものと私は信じています。
以上、抜粋終わり
私も著者と同じように、低血糖症の方は、ただ知らないだけで、現在日本でも相当数おられると予想しています。
うつ病と診断されている人の中にも、相当いると思われるし、不定愁訴で悩んでおられる方の中にもたくさんおられると思います。
早くこの低血糖症が社会で認知され、正しい対応ができるようになることを願っています。