うつ病からの脱出ー肥満・メタボリックシンドローム 3ー

今回は同テーマの第3弾です。

著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。

柴田香苗さん(仮名) 28

柴田さんは、保育園におつとめの保母さんです。子どもの世話をするのは大変なときもありますが、子どもが大好きなので、毎日が充実しているそうです。

そんな柴田さんですが、10代のころから、太りやすいのが悩みでした。子どものころはぼっちゃり体型で、高校生のときにダイエットと運動で5kgはどやせましたが、気にしないで食べたいものを食べていると、すぐに体重が増えてしまいます。それでも20代前半までは、食べる量を少し控えて、運動をすれば、コントロールできていました。

しかし20代後半になると、なかなか思うように体重が減らせなくなってきました。

もともと冷え性で、むくみやすい体質です。ここのところとくに冷え性がひどく、電車の冷房がつらくて仕方がありません。生理痛もつらく、必ず痛み止めを何回か飲みます。むくみもだんだん強くなり、とくに月経前は夕方になると足がパンパンにむくんでしまうので、恥ずかしくてスカートがはけないほどです。気がつくと、おしりや太もも、足首にまでセルライトがついていました。汗もあまりかきませんし、運動をしても筋肉がつきづらいため、自分は代謝が悪い体質なんだ、と思っていました。

体重を気にしているため、ふだんから食事の量はセーブしています。お肉は太りそうだし、たくさん食べると体に悪い気がして、野菜中心の食生活をしています。あまいものには目がないので、たくさん食べないように心がけてはいますが、仕事の帰りに必ずひとつスイーツを買って帰り、家でゆっくりしながら食べるのが毎日の楽しみです。・

今までは、それほど体調が悪いというわけでもなかったので、体質だから仕方ない、と思っていましたが、最近とくに疲れやすく、調子が出ません。子どもを追いかけていると息切れがしたり、立ちくらみがすることがあります。駅では必ずエスカレーターを使います。お腹がすくと集中力が低下したり、気が遠くなったり、手が震えたりすることがあり、心配になってきました。そして一番いやだったのは、どんなに頑張っても体重を減らせなくなってきたことです。

体調面の心配もあり、健康になってやせたい、という希望を持って、当クリ二ックを受診されました。

【既往歴】

大きな病気:なし 月経周期:やや不順・月経痛あり

【家族歴】

祖母:糖尿病 祖父:胃がん

【初診時現症】

身長:158cm 体重:55.2kg  BMI:22.1 体脂肪率:32%

【診断】

まず、血糖値の平均を示すグリコアルブミンが12・8%と低めであり、低血糖の傾向があることがわかります。空腹時に手が震えることからも、低血糖症の可能性があります。 GOT・GPTは基準値の範囲内ですが、GPTが低値であり、 ビタミンB6の不足が疑われます。フェリチンの低値は、強い潜在性鉄欠乏があることを示しています。尿素窒素が10を下回って低いことは、タン白質の摂取量が少ないことを意味します。

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体成分検査では、BMI22・1で問題はないものの、筋肉量より体脂肪量のほうが多い、いわゆる「隠れ肥満」の状態であり、体脂肪率32%と高い状態でした。

本人が希望しなかったため、5時間糖負荷試験はおこないませんでした。

【治療】

柴田さんは、強い隠れ栄養失調であると考えられました。代謝を上げてエネルギーを生み出すためには、栄養素が必要です。柴田さんには、プロテイン・アミノ酸・ビタミンB群・ビタミンC・亜鉛・カルシウム・マグネシウム・クロミウムのサプリメントを処方しました。

低血糖症ではエネルギーが作り出しにくくなり、疲れやすくなる原因となるだけでなく、糖から脂肪をたくわえるため太りやすくなります。炭水化物を控え、お肉や卵、魚、豆腐などのタン白質をしっかり食べてもらうようにしました。あまいものは週に1回にするか、タン白質や野菜をしっかり食べたあとに、少量食べるように指導しました。

また、半身浴をしたり、体を冷やさない工夫をしてもらい、運動も定期的におこなうようにしてもらいました。

【経過】

栄養療法と食事療法をはじめてから、だんだんとパワーがついて、疲れにくくなりました。子どもたちを追いかけまわしても息切れがしなくなり、駅の階段もあがれるようになりました。ゆっくりとですが、むくみも改善してきました。冷え性も完全になくなったわけではありませんが、だいぶ楽になりましだ。手の震えはわりとすぐになくなりました。生理痛も以前に比べて楽です。

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そして、お肉や卵などの動物性タン白質もふくめて、以前より食べる量が増えているにもかかわらず、だんだんと体重が減ってきました。むくみがとれてきたせいもありますが、筋肉がついて体がしまってきたようです。

柴田さんは、以前にもまして仕事や趣味にいそしみ、毎日楽しく過ごしているようです。

血液データは、フェリチンの上昇により、潜在性鉄欠乏が大幅に改善しています。GPTの上昇から、ビタミンB6の不足が改善されつつあると考えられます。尿素窒素の上昇より、タン白質の摂取量が増えていると考えられます。まだ低血糖の傾向は若干ありますが、症状が改善しているので、血糖値は安定してきたと考えられます。

 

以上、抜粋終わり

この方も対処が早く、

栄養療法によって改善しました。

何事も早めに対処すると軽く済みますね。

たとえ病気でなくとも、

予防になるので、

さらに良い結果を出すことになります。

我々は日頃からいかに予防するかを、

考える必要があるのではないでしょうか?

うつ病からの脱出ー肥満・メタボリックシンドローム 2ー

今回は同テーマの第2弾です。

前回の続きになります。

著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。

【治療】

横山さんのデータからは、「インスリン抵抗性」による「インスリン過剰分泌」があることが予想されました。

インスリンの効きが悪いと、血糖値を下げるというインスリンのはたらきがうまくいかないため、血糖値が下がりにくくなります。そうすると、すい臓は血糖値を下げるために、インスリンをよけいに分泌します。その結果、「太らせるホルモン」であるインスリンの「過剰分泌」が起こるのです。そうなるとさらにインスリンが効きすぎてしまうため、さらに低血糖になります。

インスリンが分泌されていると、糖から脂肪を合成してたくわえようとすると同時に、脂肪の燃焼を抑えてしまいます。つまり、インスリンがたくさん出ていると、脂肪をたくわえるはたらきがさらに増強するうえに、その脂肪を燃やすことが難しいために、加速度的に太ってしまうのです。この場合、やせるためにもっとも大切なことは、できるかぎりインスリンを出さないようにする、ということです。

横山さんにおこなった指導は、以下のようなものでした。

 

・糖質制限

・低GIの食事

・食物繊維を多くとる

・カロリーは抑えつつも、体に必要な栄養素はしっかりとる

・少量頻回の食事

・こまめな運動(とくに食後)

 

米・パン・めん類などのいわゆる主食、糖分(炭水化物)は食べないよう伝えました。単純にいうと、インスリンを分泌させるものは糖分だけだからです。糖分を食べると血糖値が上がり、「太らるホルモン」であるインスリンが分泌されてしまいます。残念ですが、あまいものはもちろん食べるべきではありません。どうしても食べたいときは、果物の自然なあまみや、天然の人工甘味料で代用する、または良質な脂肪やタン白質などをしっかり食べたあとに、GIの低いものを選んで少量食べるように指導しました。

また、タン白質はダイエットにとても重要を栄養素のひとつです。体重を減らしても代謝を落とさない「正しいダイエット」をおこなうためには、タン白質をしっかりとるということが非常に重要です。ですから肉や魚、卵や豆腐などのタン白質は毎食しっかり食べるようにしてもらいました。

そしてもうひとつのポイントは、食物繊維です。食物繊維の豊富な野菜や豆類、きのこ、海藻類をしっかり食べるようにすると、血糖値の急激な上昇と、インスリンの過剰分泌を抑えると同時に、満腹感を得ることにつながります。

ダイエットでは「空腹を我慢しなければならない」と思いがちですが、空腹になる(=低血糖になる)ということは、体に「飢餓状態だ!」というサインを送ることになります。すると、貴重なエネルギーをセーブしようと体が代謝を下げて対応しようとするため、やせにくくなってしまいます。これを防ぐため、食事と食事の間に必ず間食をとってもらうようにしました。

また、自己流のダイエットをくりかえしてきた横山さんは、立派な隠れ栄養失調の状態でした。この隠れ栄養失調が代謝を下げる原因となっていると考えられたため、これを補正することが必要でした。よって、プロテイン・アミノ酸・ビタミンB群・ビタミンC・亜鉛・クロミウム・ヘム鉄・カルシウム・マグネシウム・ファイバーなどの治療用のサプリメントを処方しました。

【経過】

自己流ダイエットに失敗してから、とても疲れやすくなったこと、ひまさえあれば食べもののことばかり考えるようになっていたことがストレスになっていました。しかし、指導のとおりの食事をはじめると、深い満足感が得られました。いままで「食べてはいけない!」と思っていたお肉などの動物性タン白質も、調理法に気をつければ我慢しないで食べていいので、最初は「ほんとうにこんなに食べて大丈夫かしら?」と戸惑ったそうです。しかし、結果的にメニューの選択肢が増えたそうです。もちろん、大好きなごはんやあまいものを食べないのはつらいときもありましたが、果物の自然なあまみで満足できるようになり、あまさに対する欲求は減りました。我慢している!というような、ダイエット特有の飢餓感はまったくなかったのです。

また、週2回スポーツジムにも通い、有酸素運動と筋肉トレーニンを並行しておこないました。その結果、半年間で7kgやせました。成分検査では体脂肪量は減り、筋肉量が増えていました。疲れやすさも改善し、昔のような体力が戻ってきました。

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今では、食べすぎたらもちろん体重は増えますが、自分で食べる量や内容を調整し、運動をすれば、ちゃんとコントロールできるようになりました。

まだ低血糖の兆候はありますが、中性脂肪は低下し、脂肪肝も改善していると考えられます。素晴らしい改善です。

以前のようにエネルギッシュになった横山さんは、体重を含めた健康管理をおこないながら、仕事やプライベートを楽しんでいます。

 

以上、抜粋終わり

この方は深刻な状態になる前に、

対処されたので、

早くに改善できました。

太りやすい体質の方は、

一度確認されることを

お薦めします。

うつ病からの脱出ー肥満・メタボリックシンドローム 1ー

今回は肥満・メタボリックシンドロームというテーマでお伝えします。

著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。

横山夕子さん(仮名)37才

横山さんは、外資系の商社にお勤めのシングルのキャリアウーマンです。ハードな仕事をバリバリこなして、充実した毎日をすごしています。

そんな横山さんですが、今までの洋服のホックがとまらなくなってきたので、久しぶりに体重計にのってみると、3ケ月前より4kgも体重が増えていました。ここ数年、体重や健康の管理がおろそかになっていて、徐々に体重が増えてきたことに気がついてはいたのですが、忙しさにかまけて放置していました。でも、さすがにこのままではまずいと思い、ダイエットを決意しました。

学生時代もいまと同じくらい太っていた時期がありましたが、自己流ダイエットで10kgやせた経験がありました。そのあとも、少し太ったなと思ったら、食べる量を減らせば、体重を減らすことができていたのです。

だから、「大丈夫!食べるのをちょっと我慢すれば、すぐにまたやせるはず…」と、軽く考えていました。ダイエットには自信があったのです。

やると決めたら徹底的にやる!という性格なので、1ケ月間は野菜やこんにゃくなどの低カロリーのおかずを中心に、1200キロカロリーの食事制限を自分に課しました。昼食も手作りのお弁当を会社に持って行き、徹底的に頑張りました。それなのに、1ケ月で減ったのはたったの1・2kgだったのです。

横山さんは、愕然としました。以前は食べなければやせたのに、どうしてやせないのかしら? とかなり気落ちしてしまいました。仕事は努力したらその分むくわれるのに、この1ケ月間の努力はいったいなんだったの…‥? と、一気にモチベーションが低下しました。そして、1ケ月間我慢していたビールや炭酸飲料、ラーメンにカツ丼にスイーツなど、高カロリーの食べものを食べまくってしまったのです。やっと減らした1・2kgの体重は、1日でもどってしまいました。

そればかりか、厳格な食事制限がたたったのか、体が重く、以前より疲れやすくなりました。昔は駅の階段をかけ上がっても平気だったのに、いまは動悸と息切れがするので、とてもできません。ふとした拍子に鏡を見ると、肌にハリがなく、なんだかやつれて見える自分がいます。また、食べる量は前と同じなのに、体重の増え方がどんどん加速しているような気がしました。

お父さんが糖尿病で、今はやせているけれど昔は太っていたこと、数年前に心筋梗塞になり緊急入院したことなどが、横山さんの脳裏をよぎりました。

昔のように努力してもやせないのは、年齢のせいで代謝が落ちているせいかもしれない。それだけでなく、体調も悪いし、このままの状態では際限なく太り続けて、病気になってしまうかもしれない……。こんな危機感を感じた横山さんは、「代謝を上げて、減量に成功し、健康な体をとりもどしたい!」という希望を持って、当クリニックを受診されました。

【既往歴】

大害な病第:なし 月経周期:整・月経痛あり(軽度)

【家族歴】

父:糖尿病・心筋梗塞、祖父:高血圧

【初診時現症】

身長‥155cm 体重‥60・2kg

BMI‥25・1 体脂肪率33% 血圧120/80mmHg

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【診断】

まず、血糖値の平均を示すグリコアルブミンが12・7%と低く、低血糖の傾向があることがわかります。空腹時のインスリンが7.2と、基準内ではありますが高めで、中性脂肪も180mg/dあり、糖からの脂肪の合成が亢進していることを伺わせます。GOT・GPTは基準値の範囲内ですが、γ・GTPが高く、GPTがGOTより高くなっていることから、脂肪肝が疑われます。

フェリチン値はそれほど低くありません脂肪肝があると高めの数値になるため、実際には強い鉄欠乏があることが疑われます。

尿素窒素が10を下回って低いことは、タン白質の摂取量が少ないことを意味します。

体成分検査では、BMI25で体脂肪率33%と、明らかな肥満の状態でした。

【5時間糖負荷試験結果】

横山さんの5時間糖負荷試験の結果から、境界型の糖尿病の疑いがある低血糖症であることがわかりました。血糖値の乱高下が激しく、インスリン過剰分泌を伴っていました。 まず血糖の最高値が200mg/dl近くまで上昇しており、血糖値が急激に上昇しやすい状態でした。ゆえに、急上昇した血糖値を下げるため、インスリンの過剰分泌がおこなわれています。しかしそれでも血糖値をなかなか下げられないため、インスリンの分泌は持続し、180 分から240分で、やっと血糖値は143mg/dlから93mg/dlまで低下しています。血糖値の下降が1時間で50mg/dlを超えていることから、低血糖症であるといえますが、それと同時に 120分での血糖値が140mg/dlを超えているため、低血糖症であると同時に、境界型の糖尿病である可能性があります。

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以上、抜粋終わり

この続きは次回です。

うつ病からの脱出ーうつー

今回はうつについてです。

著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。

-やる気が起きない-

小林健次さん(仮名) 42 圏軸易

 

小林さんは、商社にお勤めのサラリーマンです。

生来とてもきちんとした性格で、責任感に厚く、仕事一筋の充実した毎日を送っていました。上司からは一目置かれ、部下からも慕われ、残業も接待もなんのその、仕事が自分の生きがい、と豪語するほどの仕事人間でした。

しかし5年ほど前から、体力の衰えを感じるようになりました。まず朝起きるのがとてもつらくなりました。十分に睡眠をとっても、朝に疲れがとれていないのです。以前のように目が覚めたらばと飛び起きて出かけていく、という元気が出ません。

仕華中にも疲れを感じはじめました。体がだるいので、いまひとつ仕事に集中できません。

なにか重大な病気でもあるのではと思い、人間ドックに入りましたが、とくに異常はみつかりませんでした。会社の産業医に、ストレスのせいではないかといわれましたが、自分としてはとくにこれといった心当たりはありませんでした。

そしてだんだん、仕事にもやる気が起きなくなってきました。気力がなくなり、気分も落ち込みがちになり、ふさぎこむようになってしまいました。かと思うと、ときどきイライラすることもあります。眠りも浅く、ときどき動悸がします。起きていると体がだるいので、すぐに横になりたくなります。次第に、仕事を休むことも増えました。体調の変化が起きてからの5年間で、体重が20kgも増えてしまいました。

心療内科を受診すると、「うつ病」と診断されました。診断を受けて、小林さんはなんとなくほっとしたそうです。

抗うつ剤と抗不安薬、睡眠導入剤を処方され、きちんと飲んでいましたが、週の半分は横になっいるという状態が続きました。この2年間は休職と復職をくりかえし、現在は休職中です。

小林さんとしては、あせる気持ちもあり、一日も早くうつ病を克服して仕事に復帰しだいと思っていたのですが、心も体もまったくついていかない状態でした。

このまま薬を飲み続けていても、「治る気がしない」ということで、一念発起して、当クリニックを受診されました。

【既往歴】

喘息 痛風 胆のう炎

【家族歴】

祖父:胃がん

【初診時現症】

身長:182cm 体重:99・2kg

BMI:29 血圧:136/90mmHg

【診断】

初診時の採血で空腹時血糖が200mg/dlを超えており、過去のデータでも高血糖が確認されたため、すでに糖尿病を発症している状態と考えられました。肥満とインスリンの過剰分泌がみられることから、低血糖症からメタポリックシンドローム、そして糖尿病へと移行した状態だと考えられました(136ページ参照)。糖尿病であることが確定的と考えられたため、5時間糖負稀試験はしませんでした。

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ヘモグロビンの上昇より血液濃縮があり、コレステロール・中性脂肪も高いことから脂質異常 あり、血栓症のリスクが高い状態でした。また、GOT・GPT・γ-GTP・フェリチン等の上昇より、脂肪肝であると考えられました。

【治療】

小林さんの症状の多くは、「エネルギー不足」によると考えられるものでした。

心身ともに健康に生きていくためのエネルギーを作り出すには多くの栄養素が必要です。低血糖症やメタポリックシンドロームでは、これらのエネルギーを作るための栄養素が不足してしまいます。小林さんの場合、脂肪肝のためこれらの数値データから読みとることは困難でしたが、相当の不足があると考えられました。これらの栄養素を補給するために、プロテイン・アミノ酸・ビタミンB群・ナイアシン(ビタミンB3)・ビタミンC・ヘム鉄・ビタミンB・カルシウム・マグネシウム・のサプリメントを処方しました。うつ症状の原因に、脳内でのセロトニン(神経伝達物質)の合成低下がありますが、セロトニンを作るためには、タン白質・ビタミンB6・マグネシウムが必要です。ナイアシン(ビタミンB3)もセロトニンを合成するのに必要な栄養素です。

また、高血糖・インスリン抵抗性にもとづくインスリン過剰分泌の治療のために、糖質制限・高タン白・高食物繊維を中心とするよう食事指導をおこないました。調子がいいときにはなるべくウォーキングを、可能であれば筋トレをおこなってもらうようにしました。

【経過】

もともとまじめな性格の小林さんなので、食事療法をきっちりおこない、サプリメントも毎日欠かさず飲んでくれました。おっくうなときもありましたが、体力の許すかぎり、歩くようにしました。

そうするうちに、だんだんと薄紙をはがすように、症状が軽くなってきました。体重が、2ケ月で12kg減りました。眠りにつくのも楽になってきました。 6ケ月後には16kg体重が減り、疲労感も軽くなりました。うつ症状も軽減し、1年後にはフルタイムの仕事に復帰しました。まだ完全復帰とは言えませんが、体調をみながら仕事の量をコントロールしています。

血液データでは、肝機能障害や血液濃縮、脂質異常症も改善した。血糖値は、高血糖ではなくなりましたが、逆に低血糖が見られるようになりました。これはまだインスリン過剰分泌が完全には改善していないためと考えられます。栄養素の補給法を継続し、もう少し体重コントロールができると、症状はさらに改善するでしょう。

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低血糖症とメタボリックシンドローム、糖尿病の関係について「肥満・メタボリックシンドローム」の項にくわしく書いてありますのでお読みください。

低血糖症とうつ症状

現代では、うつ病の患者さんが増えているといわれており、社会問題となっています。うつ症状の原因にはいろいろなものがあると考えられますが、低血糖症で起こりやすい症状のひとつが、うつ症状です。

低血糖症では、下がった血糖値を上げるために、さまざまなホルモンを分泌せざるをえなくなります。中でもアドレナリンやノルアドレナリンなどのカテコールアミンは、脳内での神経伝達物質としてもはたらきます。これらのホルモンが異常に分泌されることによって、脳内の神経伝達物質のアンバランスが起こり、これがうつ症状を含め、さまざまな精神症状の原因になると考えられています。

また、セロトニンという神経伝達物質が低下するとうつ症状が起こることがわかっていますが、セロトニンは脳内でトリプトファン(アミノ酸の一種)をもとに、ビタミンB6・マグネシウなどを利用して合成されます。これらの反応の補酵素として、鉄や亜鉛、ビタミンB3なども必要です。

タン白賃やビタミンB群、マグネシウムや鉄や亜鉛などの不足は、脳内での神経伝達物質の合成低下を招くため、うつ症状の原因となります。低血糖症やメタポリックシンドローム、肥満などではこれらの栄養素の必要量が増えるため、不足が起こりやすくなります。

低血糖症でうつ症状を伴っている場合、まず血糖値を安定させること、そしてこれらの栄襲素の不足を是正することが必要となります。

うつ症状の原因は多彩であり、低血糖症や栄養失調以外にも、甲状腺機能低下症や副腎疲労が原因となっている場合もあれば、食物アレルギーが関与している場合もあります。高名な精神料医で分子栄養学の権威であるカナダのエイブラム・ホッファー博士は、うつの75%には食物アレルギーが関与しているとも述べています。

症状に応じて適切な検査をおこない、可能なかぎり原因を究明し、原因に即した治療をすることが必要です。

 

以上、抜粋終わり

うつ病の中に

低血糖症が潜んでいる

可能性があることは、

これまで何度も指摘してきました。

ゆえにうつ病の方は、

まず自分の食事内容を見直し、

低血糖症であるかどうかを

確認する必要があります。

そのうえで自分が受けるべき治療を

検討してください。

 

うつ病からの脱出ー過食症 4ー

今回は同テーマの第4弾です。

前回の続きとなります。

著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。

さらに困ったことに、血糖値が下がりきる前から、血糖値を上げるためのアドレナリンやノルアドレナリンなどの「攻撃ホルモン」が、すでに分泌されはじめています。つまり、非常用スイッチがオンになったときには、すでに自分で自分をコントロールすることができない状態になっているのです。それまでは我慢に我慢をかさねて、食べないようにしていたのに、このスイッチが入ったとたん、そんなことはもうどうでもよくなってしまいます。目の前にある食べものを手当たりしだいに食べまくり、ハッと我にかえったときには、家中の食べものが全部なくなっています。そして、ああ、またやってしまった……、と落ち込むのです。

これを繰り返しているため、多くの過食症の患者さんは、自分のことを「意志の弱い人間」だと思っています。周囲の人もそう思っている場合があり、患者さんを非難することがありますが、残念ながらこの強烈な食欲に逆らうのは、とても難しいことです。私たちの生存本能が、生き延びるためにおこなっていることですから、自分の意思でどうこうしようというレベルをはるかに超えている、といってもいいでしょう。これらの症状はすべて脳とホルモンがおこなっていることであり、けっして過食症の患者さんの意志が弱いわけではないのです。低血糖症がそうさせている、という理解が必要です。

また、過食症の患者さんには、過食したあとに嘔吐する人が多いです。なぜ吐くかというと、自分で食べることをコントロールできない以上、太らないでいるためには吐くしか方法がないからです。たくさん食べても吐いてしまえば、カロリーをとらずにすみます。そして多くの患者さんは、吐くことを過食の言いわけにするようになります。つまり、どうせ吐くのだから、食べたいものをいくら食べてもいいじゃない! と考えるわけです。もちろん、そういうときに食べるのは、ふだん我慢しているあまいものや菓子パンなどです。

しかし残念ながら-ここはよく理解していただきたいのですが-吐いても食べてしまったものはチャラにはなりません。吐いてしまえば食べなかったのと同じ、ということにはならないのです。ここにも、血糖値が関係してきます。

あまいものなどに多く含まれる単純な糖分は、とても吸収が速いのです。とくに、砂糖やブドウ糖果糖液糖などの二糖類・単糖類は吸収がとても速く、口や胃の粘膜からも吸収されることがわかっています。そういうものを食べたり飲んだりすると、吸収が速いため、あっというまに血糖値が急上昇してしまいます。つまり、あとで吐こうがなにをしょうが、血糖値は上がってしまうわけです。となると当然、上がった血糖値を下げようとしてインスリンが分泌されることになります。インスリンはそう、「太らせるホルモン」です。あとで吐いても、チユーイングをするだけでも、あまいものをある程度口にすると、結局はインスリンが分泌されてしまうのです。

インスリンは血糖値が上がると、糖を脂肪にたくわえることで血糖値を下げようとします。吐いているのにちっともやせない、むしろ太る、というのは、このような理由によるのです。そしてインスリンが出てしまったにもかかわらず吐いてしまうと、体内に入ってくるはずの糖分が入ってこないために、インスリンが効きすぎてしまい、血糖値がさらに下がってしまいます。ということは、過食して吐いたあとに、すぐにまたお腹がすいて、もっと食べたくなってしまうのです。これはまるで「過食の蟻地獄」のようではないでしょうか?

つまり、過食症を治すためにやるべきことのもうひとつは、「低血糖症を治す」ということです。

低血糖症を治すということは、とりもなおさず血糖値を安定させる、ということですが、そのためには「なにを食べるか」がとても重要です。ゆりさんの例でも説明しましたが、太りたくないからといって長い間満足に食べないでいると、低血糖を起こします。そしてそのあと必ず過食になります。低血糖を防ぐためには、「こまめに食べる」ことが必要です。そしてもうひとつのポイントは、「血糖値を上げにくいものを食べる」ということです。過食をするときも、あまいものや白米や白パンなどは避け、野菜やタン白質などのおかずを食べることです。そうすることで食後の低血糖を防ぐことができます。これはあとで嘔吐するときも、しないときも、です。当然、あまい食べものや飲みもの、スナック菓子などは厳禁です。白米や白パンなども避けたほうがよいでしょう。具体的になにを食べたらよいかについては、3章の治療の項でくわしく書いていますのでお読みください。

もちろん、病的な心理的要因が原因のひとつとしてある場合は、それを同時に治療することが必要です。過食症の治療経過で、栄養失調を治し、血糖値が安定して、過食の症状が落ち着いてきても、ある日突然、過食がぶり返すことがあります。患者さんに話を聞くと、そういうときには必ず精神的なストレスがあります。多くの過食症の患者さんは、ストレスにうまく対処することが得意ではないようです。ストレスをうまく発散できない場合、過食することで発散しようとするのです。経過が長い患者さんの中には、過食嘔吐がすっかりレジャー化してしまい、逆に「しないと落ち着かない」という人もいるくらいです。しかしこれは「依存症」と同じであり、健康的な方法とはいえませんし、実際の問題解決にはなりません。ストレスの解消方法、またはストレスを生み出す考え方を変えていくと、生きていくのが楽になり、過食も改善します。その場合は心理療法の専門家の助けをかりることが必要です。

 

以上、抜粋終わり

低血糖症が絡んでいる場合、

自分の意思だけでは食欲をコントロールできません。

なのであなたの意思の問題ではなく、

本能がさせていることなので、

自分を責めても仕方ありませんし、

また責める必要もありません。

ただ専門家の指導の下で、

治せばよいだけです。

なので自分の症状を治してくれる専門家を探しましょう。

 

 

うつ病からの脱出ー過食症 3ー

今回は同テーマの第3弾です。

前回の続きになります。

著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。

残念ながら、いったん強い飢餓状態におちいると、ふつうに食べることだけで不足した栄養をおぎなうのは至難のわざです。ふつうに食べるだけではマイナスになってしまった栄養素をプラスにもどすのはむずかしいですし、多くの人たちが過食をするときに食べたくなるものはきまって、お菓子やパンや白米などの、精製された糖分なのです。さらに、もともと「太りたくない」という気持ちが強いこれらの人たちは、肉や卵などのタン白質食品を「太る食べもの」と思い込んでいることが多いため、過食のときにそういうものを食べようとはしません(実際には、一番太る食べものは糖分なのですが!)。しかし、精製された糖分でできた食品をいくら食べても、不足した栄養素の補給にはならないため、いつまでたっても「隠れ飢餓状態」が改善することはないのです。

つまり、過食症を治すためにおこなうべきことのひとつは、「隠れ飢餓状態を治す」ということです。具体的には治療用のサプリメントを利用する、という方法をとります。

ちをみに、間違ったダイエットの「ツケ」は、これだけではありません。まず「隠れ飢餓状態」は、体調不良の原因になります。いわゆる「不定愁訴(明らかな病気ではないのに出るいろいろな症状)」の多くは、じつは栄養失調が原因であることが多いのです。さらに、タン白質やビタミンB群・鉄などの不足は、代謝の低下をまねきます。つまり、太りやすい体になってしまう、ということです。太りたくない一心で必死に努力してきたことが、結果的に体をこわし、太りやすい体を作ってしまうとは、なんと皮肉なことなのでしょうか。正しいダイエットの方法については三章にありますので、参考にしてください。

もうひとつ、過食を起こす大きな原因と考えられるのは、低血糖症です。

先ほど述べたように、多くの患者さんが過食するときに食べたくなるものは、きまってふだん我慢しているあまいものや、ごほん、パンなどの精製された糖分です。ということは、当然それらを過食することによって、血糖値が上がったり下がったり、をくりかえす、「血糖値のジェットコースター 状態」におちいります。参考までにほかの二例の過食症患者さんのOGTTを下記に掲載しました。

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脳は基本的に血糖(グルコース)しかエネルギーとして利用することができない、ということは前に書きました。さらに、脳はグルコースをためておくことができず、40秒だったらつかい切ってしまいます。脳が、必要なエネルギーを得てつねに機能し続けるためには、よどみなく流れ続ける川のように、つねに適した濃度のグルコースが脳の中に流れ込んでこないといけないわけです。血糖値がいきなり下がってしまうということは、川の流れがいきなりせき止められてしまうのと同じです。脳に必要なだけのエネルギーが入ってこなかったら、脳の機能がストップしてしまいます。

つまり、血糖値の急激な低下は、脳に非常に強い危機感をあたえます。まさしく前述したゆりさんのように、血糖値が30分で80mg/dlも 下がってしまうような場合です。あまりにも急激に血糖値が下がってしまうということば、脳へのエネルギー供給が突然ストップすることと同じですから、まさに非常事態です。この状態が長時間続くと、いずれは脳死状態となり、最悪の場合、死んでしまうかもしれません。私たちの生存本能は当然、それを回避するために、「血糖値を上げよう」とするシステムを作動させます。つまり、「食べろ!という命令スイッチが押されるわけです。これがすなわち、「お腹がすく」ということです。

もちろん低血糖症でなくても、誰でもお腹はすきます。しかし、このスイッチが入ると、多くの過食症の人は目の色が変わってしまい、尋常なお腹のすき方ではなくなってしまいます。ふつうの人が毎日感じているような、「あ〜あ、お腹すいたぁ〜」という程度の空腹感ではなく、下がりすぎた血糖値を上げて「生存する」ための信号ですから、かなり強烈です。ふつうの人の空腹を知らせる信号が、「昼食の時間を知らせる定時のチャイム」だとすると、過食症の人にとっての信号は「火事を知らせる非常用ベル」のようなものです。低血糖という非常事態をのりきるため、「食べて、食べて、食べまくれ!」という非常ベルが、脳の中でけたたましく鳴り響くわけです。

 

以上、抜粋終わり

今まで脳については、

糖分だけが栄養源という説でしたが、

新たにケトン体でもいいことがわかってきました。

これについては機会を改めてご紹介したいと思います。

うつ病からの脱出ー過食症 2ー

今回は同テーマの第2弾です。

著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。

過食症は「心の病気」か?

過食症は、一般的に「心の病気」といわれています。心の問題が原因で、常識では考えられない量の食べものを食べてしまう、場合によっては食べたものをぜんぶ吐いてしまう、などの症状が起こるとされています。

しかし、過食症はほんとうに「心の病気」なのでしょうか?

拒食症と過食症をあわせて摂食障害といいますが、摂食障害に心の問題が深くかかわっているということについては、疑いの余地はありません。しかし、心の問題を解決する目的で、心理カウンセリングなどによって過食症の治療をおこなった場合、改善する患者さんももちろんいらっしゃいますが、改善されない患者さんも多くいらっしゃるのです。治療がうまくいって心理的な問題が解決され、気持ちは楽になったとしても、過食や嘔吐は治らない、という患者さんがたいへん多いのです。

過食症は拒食症から発展することが多いといわれていますが、ゆりさんのようにダイエットからはじまる場合も多くあります。また、ダイエットにかぎらず、ほかの病気の治療目的でおこなった断食などがきっかけで、体重が大きく減少した場合などにも起こりえます。つまり過食の原因には、必ずしも深刻な心の問題が存在しているわけではない、ということです。そのような患者さんに共通しているのは、いったん極度の栄養失調におちいったあとに、過食症を発症する、ということです。

もちろん、同じように体重が減ったり栄養失調におちいったりしても、必ずしもすべての人が過食症になるわけでもありません。つまり、過食症になりやすくなる条件や、体質などがあると考えられます。

そのような過食を起こす大きな原因として考えられるのが、「隠れ飢餓状態」と「低血糖症」なのです。

現代の日本には食べものがあふれていて、一見栄養は満ち足りているようにみえます。しかし、実際には食べものに含まれる栄養素の量が減少しているので、ほんとうに必要な量の栄養素はとれていない人がほとんどです。とくに白米や白パンなどの精製された食品や加工された食品は、カロリーだけは過剰なほど高いのに、体を作ったり機能させたりするために必要なタン白質やビタミン・ミネラルなどの栄養素はほとんど入っていない、といっても過言ではありません。毎日お腹いっぱい食べていても、実際には栄養はちっとも足りていないのです。私はこれを「隠れ栄養失調」と呼んでいます。

私たちの体がほんとうに必要としている栄養素の量は、厚生労働省がさだめている必要栄養所要量よりも、実際には数倍〜数百倍多いといわれています。ということは、現代人のほとんどは「隠れ栄養失調」だと考えられます。

ふつうに食べていても栄養(カロリーのことではなく、タン白質やビタミン・ミネラルなどのことです)が足りをいのに、そこでまちがったダイエットや断食などをおこなってしまったら、どうなるでしょう? 当然、強い栄養失調を起こします。これを「隠れ栄養失調」を超えた、「隠れ飢餓状態」と呼ぶことにしましょう。

とくに「隠れ飢餓状態」になりやすいのは、成長期のダイエットです。日本ではスリムを女性がもてはやされているため、いまは中学生や小学生のときからダイエットをしている女の子がたくさんいます。多くの場合は、ダイエットをしようと思っても、目的の体重になる前に食欲に負けてしまい、体重を激減させることはむずかしいものです。ですが、ゆりさんのように意志が強かったり、強迫観念などなんらかの病的な心理状態が存在する場合、食欲という本能に逆らって、食べずにいることを続け、無理なダイエットに成功してしまいます。拒食症はこれが極端になった状態です。そして結果的に、極度の栄養失調におちいってしまうのです。

やせたくてしかたない若い女性のみなさんは、「栄養失調なんてどうでもいいし、やせられればいいのよ!」と思っているかもしれませんが、これは明らかにダイエットの方法としてはまちがっています。残念ながら、間違ったダイエットをおこなうと、体に負担がかかるため、あとで必ず「ツケ」がまわってきます。そのツケのひとつが、「過食」を引き起こすということです。

過食症までいかなくとも、多くの人が、ダイエットをしようとして食事制限をしたあとに、反動で過剰な食欲にみまわれた経験があると思います。拒食症はもちろん、無理なダイエットや断食、胃腸の病気などで、いったん強い栄養失調、つまり飢餓状態におちいると、体は危機感を感じます。このまま食べものが手に入らなければ飢え死にするかもしれない、と体が認識すると、生き延びるための生存本能がはたらきます。すなわち、食べものを強く求めるようになるのです。つまり、栄養素を手に入れようとする体の自然な反応として、過食になるのです。

 

以上、抜粋終わり

上記のように、

摂食障害は

安易なダイエットが

原因で発症しているケースがかなりあります。

心理面ばかり指摘されていますが、

こういケースは心理とは関係なく、

機能不全なので、

違うアプローチが必要です。

何が原因で始まったのかを、

よく見極めてください。

上記の続きは次回になります。

 

うつ病からの脱出ー過食症 1ー

今回は過食症がテーマです。

著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。

- 食べて吐くのがやめられない! -

山田ゆりさん(仮名)20

ゆりさんは、一見おとなしく人見知りする印象の専門学校生です。

17才のときにクラスの男の子に体型のことでからかわれたのがきっかけで、ダイエットを決意しました。もともとまじめな性格で、なんでも真剣にとりくむタイプのゆりさんは、厳格にカロリー計算をおこない、食べる量を減らしました。とくにカロリーの高そうなお肉や油っこいものを控え、カロリーの少ないこんにゃくや野菜をおもに食べるようにしていたそうです。ダイエット前は身長156 cmで55kgでしたが、かなりがんばってダイエットをした結果、半年で42gまで減らすことに成功しました。

体重が減って一時はとても満足できましたが、それまできちんときていた月経がとまってしまいました。また、立ちくらみやめまい、貧血などの症状が起こるようになりました。集中力もなくなり、イライラして家族に当たったり、憂うつになったりすることが多くなりました。

減量に成功したあともしばらくは食事の量を控えていましたが、だんだんと我慢ができなくなって、少しずつお菓子やアイスクリームなどを食べるようになりました。そしてある日突然、食欲がとまらなくなり、約半年後、過食がはじまりました。

過食してしまうときは、ふだん食べないように我慢しているもの、とくにあまいものやごはんなどが食べたくてしょうがありません。いったん食べはじめると頭の中が真っ白になり、お腹がパンパンになるまで食べまくってしまいます。コンビニで3000円くらい買い物をしても、あっというまに食べきってしまうのです。

ゆりさんはあせりました。せっかくがんばってやせたのに、こんなに食べていたら体重がまた元に戻ってしまいます。どうしても体重を増やしたくないゆりさんは、雑誌で摂食障害の記事をみたのをきっかけに、それをまねして過食したあとに吐くようになりました。いつしかそれが習慣となり、最近では吐くことを前提に過食するようになってしまいました。

受診時はほとんど毎日のように過食嘔吐をしていました。食べて吐くのはいつも夜で、それ以外のときは、太りたくないのと、食べだすと止まらなくなるのが怖いので、ほとんど食べません。

最初は家族に隠していましたが、嘔吐がはじまってしばらくすると、すぐにばれてしまいました。家族は心配しましたが、ゆりさんは太りさえしなければそれでいい、と思っていました。でも、ゆりさんの意に反して、吐いているのに体重はだんだん増えていき、イライラ、うつ症状、慢性疲労、冷え、不眠、便秘、湿疹などが悪化し、体調が日に日に悪くなっていきました。朝も起きられず学校も休みがちになり、勉強にも集中できないので、休学することになりました。

今のゆりさんは、食べもののことしか頭にありません。我慢しているから、いつも食べたい。でも過食になってしまうから、食べるのが怖い。そして、太りたくない…‥。

家族も心配し、さすがに自分でもこの状態をなんとかしたい、という気持ちになったゆりさんは、家族のすすめで精神科を受診しました。抗うつ剤をもらい、ほんの少し気分はよくなったような気がしましたが、過食嘔吐は治りませんでした。

家族の方がインターネットで摂食障害について調べているうちに当クリニックを見つけ、受診されました。

【既往歴】

2年以上無月経

【家族歴】

父:高血圧 祖母:糖尿病

【初診時現症】

身長:156cm 体重:50kg  BMI:20・5

【診断】

ゆりさんのデータを見ると、まず貧血が大きな問題であり、体調不良の原因の大きな部分を占めていると考えられました。月経がしばらくないのに貧血なのは、強い栄養失調であるためと考えられます。フェリチンの低値は鉄欠乏があることを意味します。特記すべきは亜鉛の低さでした。亜鉛は食欲のコントロールに深く関係しているミネラルです。GOT・GPTのアンバランスから、ビタミンB群の不足が強いことも示唆されました。

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これらの栄養失調は、脳に「飢餓状態だ!」という信号を送ります。その信号を受けとると、脳は生き延びるために食べものを手に入れようとします。つまり、お腹がすくわけです。このような栄養失調は食欲の冗進をまねき、過食を引き起こす原因となると考えられます。

また、グルコースとグリコアルブミンの低値、遊離脂肪酸の上昇、尿中ケトン体陽性は、低血糖症を強く疑わせるものでした。標準体重の若い女性にしては中性脂肪が高めなのも、低血糖症を疑う所見です。確定診断のため、5時間糖負荷試験をおこないました。

【5時間輝負荷試験結果】

ゆりさんの糖負荷試験の結果は、インスリン過剰分泌を伴う激しい反応性低血糖症でした。ブドウ 糖を飲むことによる血糖値の急激な上昇の後の下降がとても激しく、1時間で60mg/dlも血糖値 が低下しています。また、血糖値が28mg/dlまで下がっていることも驚きです。このようなことが起こると、脳が危険だと判断するため、血糖値を上げるためにアドレナリン・ノルアドレナリンが分泌されます。その結果、自分で自分をコントロールすることができなくなってしまいます。また、低血糖から脳を守るために、「食べろ!」という指令が強烈に脳から発せられます。これらの結果として、過食になると考えられるのです。

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【治療】

食べることに関するゆりさんの問題は、「過食」と「拒食」の両方でした。太りたくないから食べない、でも食べないで我慢しているといずれ我慢も限界となり、過食をしてしまいます。食べることを我慢し続けるかぎり、低血糖になり、そのあと必ず過食になります。この場合、食べることが過食を治す近道なのです。

食事指導として、まず「食べたくなくても食べる」、「過食は我慢しない」ということを指導しました。タン白質と野菜などの、低GI・高タン白・高食物繊維の食品を、食べたくなくても少しずつ、頻繁に食べるように指導しました。これは空腹時問が長びいて低血糖になることを防ぐためです。また過食そのものは、誰でも治療をはじめてすぐにはおさまりません。過食を無理に我慢させることはせず、過食してしまうときにも、あまいものなどではなく、まずタン白質や野菜などの低GI食品を選ぶように指導しました。これは食べたあとの血糖値の急降下を防ぐことがねらいです。どうしてもあまいものを食べたいときには、タン白質や野菜などを食べた後に少量食べるように説明しました。

そして同時に、栄養失調を治すため、プロテイン・ビタミンB群・ヘム鉄・ビタミンC・カルマグ・亜鉛のサプリメントを処方しました。

【経過】

治療開始後1ケ月ほどで過食の回数が減りました。3ケ月後の再検査の時点では、過食嘔吐はすっかりなくなっていました。お腹がすく前に食べることを指導されたことで、「食べていいんだと思い、気持ちが楽になったそうです。最初のうちは少し食べるだけではおさまらず、過食になったりしましたが、だんだん食べる量をコントロールできるようになりました。白米を食べると、そのあとだるくなったり眠くなったり過食したくなるのがわかるので、おかず中心にいろいろなものを食べるようにしています。食べものがおいしい、と久しぶりに思えるようになったそうです。

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貧血も改善し、体調も回復してきました。少し前は、家族と出かけても2時間くらいですぐに疲れて休憩するか、家に帰っていたのに、今では長時間出かけられるようになりました。以前に比べ、精神的に安定してきたためか、「どうしても太ってはいけない」という気持ちはうすれてきました。体重は1〜2kg増えましたが、体成分検査では筋肉が増えていました。まだ体調が不安定なので、もう少し元気になったら、学校に復学したい、と思っているそうです。

血液データもとてもよく改善しています。まだ精神的に不安定な部分もありますので、心理療法を併用し、根気よく治療を続けていくつもりだということです。

 

以上、抜粋終わり

この症例の方のように、

ダイエットを行ってから、

体調を壊される方は多いです。

これはきちんとした知識もなく、

安易に行うことが原因です。

また巷に溢れているダイエット法も、

中途半端な栄養学で、

いい加減なものが多く、

それを実践して身体を壊される方も多いです。

ダイエットとは飢餓状態を作り出すわけですから、

生半可な知識では身体を壊してしまいます。

必ず経験豊富な専門家の指導の下で行ってください。

 

うつ病からの脱出ーパニック障害 3ー

今回は同テーマの第3弾です。

著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。

【解説】

田代さんは初診時、明らかな栄養失調状態でした。まずヘモグロビンが基準値を下回っており、貧血であったことは大きな問題です。52才で子宮摘出術を受け、閉経しているので、もう月経はありません。胃カメラをしたとき軽い胃炎が見つかりましたが、明らかな冒からの出血はありませんでした。明らかな出血がないのに貧血が起きている理由としては、まず栄養失調を考えなければいけません。

また、田代さんはデータから、明らかな低蛋白血症であり、鉄欠乏の状態でした。ほかの項目からビタミンB群の不足も示唆されました。これらはすべて血液の材料となる栄養素であり、その不足が長期にわたると、赤血球を十分に作ることができなくなり、貧血になってしまうのです。

貧血を起こすような栄養状態は、当然ホルモンや神経伝達物質などの材料が不足しているということであり、ホルモンバランスや自律神経調節、または精神的を症状にも影響をおよぼす場合があります。症状の原因としてこれらの栄養失調が考えられる場合には、まず不足している栄養素を補う必要があります。

田代さんの場合、これだけ栄養失調になっていたのは、ピロリ菌の影響と、ご主人に合わせてタン白制限をおこなっていたせいだと考えられます。進行した腎不全などの特殊な状態でないかぎり、タン白質を制限するということは、栄養失調を起こす大きを原因となり、健康を害するおそれがあるため、おこなうべきではありません。

また田代さんが控えていたタン白質の代わりに食べていたものは、炭水化物でした。白米やめん類などの精製炭水化物は、血糖値を急激に上げて結果的に低血糖を起こし、アドレナリンやノルアドレナリンを分泌させます。そしてこれがパニック発作や、怒りっぽさなどの原因になっていると考えられます。

ピロリ菌による萎縮性胃炎の存在も、栄養素の消化吸収を阻害するため、栄養失調の原因となります。とくにタン白質や鉄・カルシウムなどの栄養素の吸収不良の原因となることがあるのです。しかし糖分の吸収には影響しないため、糖分だけは吸収されてしまうので、低血糖症を起こしやすくさせる条件のひとつになる場合があります。ピロリ菌がいて胃炎などの症状がある場合は、医師に相談してみるとよいでしょう。

パニック障害とは

パニック障害とは、くりかえして起こるパニック発作と、発作が起こることへの不安、およびそれに伴う回避行動(パニック発作を起こした場所を避けるなどの行動)が特徴とされる、不安障害の一種です。

パニック障害の原因はまだよくわかっていませんが、脳の青斑核という部分におけるノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌の異常が指摘されています。通常は薬物療法または心理療法などがおこなわれますが、なかなか治療が難しいのが現状です。

パニック障害の原因はいろいろなものが考えられますが、その中のひとつとして考えられるのが、低血糖症です。

あまいものなどの精製された糖分を食べることなどにより、低血糖が引き起こされると、今度は血糖値を上げるためのシステムが作動します。中でも重要なはたらきのひとつが、何度も書いているように、種々のホルモンが分泌されるということです。

血糖値を上昇させるために分泌されるホルモンの一種、アドレナリンとノルアドレナリンは、前述したように「攻撃ホルモン」と呼ばれるホルモンです。とくにノルアドレナリンは、不安感や恐怖感、絶望感などのネガティブな感情を引き起こします。一部のパニック障害の患者さんは、低血糖症によるこれらのホルモンの影響により、症状が誘発されていると考えられます。

症状や食事内容から低血糖症が疑われる場合は、5時間糖負荷試験をおこない、低血糖症の有無を判断するとよいでしょう。

また、低血糖症以外にも、食物アレルギーや重金属、腸内環境の悪化、ホルモンバランスの乱れなどによっても症状が起こる可能性があります。一般的な治療法で効果がない場合は、これらのくわしい検査をおこなってみると、まったく別の治療の糸口が見つかる場合があります。専門家に相談されることをおすずめします。

 

以上、抜粋終わり

上記の症例も食事の問題が絡んでました。

私は精神疾患はすべて食事の問題が、

絡んでいると考えています。

現代の食事は、

食べているから栄養は満たされている

とは限りません。

そこが問題なのですが、

この問題を解決するには、

食事に対する知識を深めなければなりません。

日々の生活のことなので、

しっかりと勉強して欲しいと思います。

鍼灸の勉強に関して

私は鍼灸師の免許を取る前から

つまり12年前に

東洋はり医学会関西支部という

経絡治療を勉強する勉強会に所属して

毎月1回第3日曜日に行われる例会と

最終月の水曜日の晩に行われる実技だけの勉強会に

ずっと参加して研鑽に励んでいます。

それは今も続いています。

写真は勉強会の風景です。

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我々の仕事は技術職なので、

絶えず技術の向上が欠かせません。

これは自分のためだけでなく、

患者さんのためでもあります。

それはこの仕事を辞めない限り、

これからも続けていくつもりです。