今回は具体的な減薬・弾薬法のケースというテーマでお伝えします。
著書『心の病に薬はいらない!』から下記抜粋します。
処方パターン別減薬・断薬対応法
それでは具体的な減薬・断薬法について考えてみましょう。
まず断薬には、低用量タブレットと散剤を組み合わせて使うとよいです。散剤がない場合は、ピルカッターで慎重に小さくカットするようにします。
減薬過程で患者の禁断症状が強い場合は、いったん向精神薬の量を据え置いて、禁断症状に慣れるまで待ちます。このとき禁断症状緩和のために、いかなる向精神薬も追加しないことが鉄則です。依存を深め自律神経系に不安定をもたらし、回復を遅らせる原因となります。
また禁断症状があるから減らさないという発想は間違いです。禁断症状があっても減らすのが基本で、止めるのは特にその症状が強いときだけです。これは薬物リハビリにかぎらず、リハビリそのものの基本的な考え方です。
脳梗塞後の麻痺のリハビリでも、病気のつらさ、関節の痛さや手足が動かない苦痛があるのに、あえてつらいリハビリをするのです。薬物リハビリもこの原則を重視しなければいけません。
またあなたが最初に精神科を受診したとき、どのような症状だったかを思い出すことが重要です。
たとえば不眠の人がいます。うつっぽいという人もいます。幻覚や錯乱など重い精神病的状態の人もごくたまに見かけます。これを考慮して減薬することは大切なことです。最初不眠だった人は、減薬していく過程で、向精神薬の処方を夜に飲むように調整していくことが大事です。また最初から幻覚があった人となかった人では、減薬の慎重さが変わってきて当然です。それらを総合的に考えないと、断薬の確率が上がることはないでしょう。
①単剤の場合
日本の精神科の現況を考えれば、単剤を処方されている人のほうがよほど少ないと推測されます。しかしこれは減薬するうえでの基本なので、考察して損をすることはありません。
まず自分の飲んでいる薬が比較的抜きやすい薬か、抜きにくい薬か、非常に抜きにくい薬かを区別してください。これにも個人差はあるのですが、基礎的なこととして知っておきましょう。ここでは私の独断と偏見で、それぞれの分野の比較的使われやすい薬を3段階に分けます。
繰り返しますが、この抜きやすさの感覚は私の独断と経験に基づくものであり、何の科学的根拠もないことはご理解ください。またジェネリックに属するものや、同じ成分で他社の薬剤はご自身でお調べください。これらの薬すべてに注釈をつけて減らし方を書くことはできません。
さらに言えば同じものを飲んでいる人でも、人によって減らし方や量を変えるのはよくあることで、原則を押さえることが大事です。
ここでは日本でよく使われるジプレキサ、リスパダール、パキシル、デパス、ロヒプノールについて、私流のやり方を書いてみることにします。
【A‥ジプレキサ20㎎(CP換算800)を飲んでいる場合】
精神医学の闇に接するようになって数年、おそらくこのジプレキサこそが抜いたとき、最も恐るべき禁断症状が出る薬だと思っています。
近年、一番販売額が多い薬ですからさらに始末に負えません。基本的に統合失調症の破瓜型によく使われますが、ジプレキサを使うと、まさに本人が統合失調症の破瓜型のようになってしまうのです。
精神科にかかり出したころは錯乱もなかったのに、ジプレキサを投与され薬を変更したとき、薬を減らしたときに錯乱、支離滅裂になるという例が後を絶ちません。これ自体が精神疾患でもなんでもなく禁断症状であり、医原病であることに気づけるかどうかがカギです。こうなる理由はジプレキサが多数のホルモンに働きかける、特殊な薬(MARTA)であることが要因だと思われます。
まず薬の量に応じて患者が過鎮静(注意力が低下するなど、過剰な鎮静状態)になっているかどうかを判定してください。過鎮静になっていれば通常より少し早く減量できる可能性があります。私流の標準的なやり方としては20㎎→17・5㎎→15㎎というふうに、CP 1OO単位程度で2週間から4週間程度のペースで減らしながら様子を見ます。過鎮静であれば大きな禁断症状が出る可能性は低いので、2週間ずつくらいで進めることが多いです。
これまでの意識づけや知識の問題に加え、第11章に示す禁断症状の緩和法もうまく活用してください。
考え方としては錯乱したりしなければ、次のステージに進む(頭痛、食欲低下、腹痛、 不安などがあっても)つもりでいなければなりません。禁断症状が出るから減薬が止まってしまうというのなら、最初から減薬も断薬もしないほうがましです。 まずはこれを何回か繰り返して、CP換算400程度(ジプレキサ10㎎)を目指します。
10㎎まで進めばここからは個人の考え方により左右されてきます。慎重に減らしたい方は10㎎→9㎎→8㎎というふうに、1㎎ずつ2週間から4週間単位で減らしてください。この場合1㎎という錠剤はありませんので、ジプレキサ細粒という粉を活用します。細粒が手に入らないなら自分で加減するより手はありません。
まだ過鎮静があったり減らすことを優先したい方は、10㎎→7・5㎎→5㎎というふうに5㎎までは進んでください。ただジプレキサは5㎎前後(CP200前後)によく壁を感じ、いわゆる破瓜型のような状態が見られることがあります。5㎎までくれば4 ㎎→3㎎→2㎎というふうに、同様に2週間から4週間単位で減らしてみてください。1㎎まできて慎重に進めたい方は、0・5㎎を間にはさんでもかまいません。
以上、抜粋終わり
暫く具体的な減薬・断薬方法をお伝えしていきますので、
参考にしてください。