今回からテーマを変えてお届けします。
著書『読んでやめる精神の薬』から下記抜粋します。
うつ病はなぜ起きる?
現代人は、常にさまざまなストレス(刺激)にさらされながら生きています。そして、その刺激を受け止め、代謝し、調整をし、情報を処理し、有害な刺激を受けないように防ぎ、あるいは排除するなどして適応し、一定の好ましい状態を保っています。こうした働きを、ホメオスターシス(恒常性)機能といいます。
病気や疾病というのは、このホメオスターシスが破綻した状態を意味します。ホメオスターシスが何らかの原因により異常な変化を起こし、日常生活に差し障りが出てくるようになると、それが「病気」と認識されることになるのです。うつ病も、心のホメオスターシスが崩れた状態だといっていいでしょう。
うつ病の症状には、さまざまなものがあります。ちょっとしたことで気分が落ち込む、憂うつで何をしても楽しめない、焦りを感じる、興味がわかない、やる気が起きない、気が散って集中できない、必要以上に責任を感じる……。こうした症状がほとんど毎日あり、それが続く状態をうつ病と呼びますが、気分的なことだけでなく、食欲や睡眠といった体調面で障害が起こることもありますし、症状がひどくなると自殺願望まで生じかねません。
では、なぜうつ病になるのでしょうか。その原因として考えられるのは、興奮毒性による神経の損傷です。ストレスなどを原因とする過剰な興奮や虚血があると、脳内にグルタミン酸などの興奮性神経伝達物質が大量に生まれ、その毒性によって脳の神経細胞が傷つけられます。傷つけられた神経細胞の種類や働きに応じて、神経の不調にともなうさまざまな症状が出るのです。
こうした神経の損傷は、生まれたときから、いや、生まれる前から始まっています。たとえば、胎内にいるときに、母親(母体)が過剰な興奮や不安を覚えたり、薬剤の影響を受けたり、あるいは子どものころに十分な愛に恵まれずに虐待を受けて育ったりした場合や、自然災害や事故に巻き込まれるなどの大きなショックを受けるような出来事に遭遇した場合、または大切な人との別れ、突然の失業を経験したとき…。私たちは、いつどんなときに、日常的なストレス以上の大きなストレスに見舞われるか、予測もつかないのです。
また、仮にそうしたストレスを乗り越えたとしても、実際には過剰な 〝がんばり〞で自分自身をむち打ち、自分の脳を興奮毒性にさらし続けたことになり、それがうつ病の原因になることもあります。こうしたケースは、とくに物事を人任せにできない、完璧主義の人に見られるパターンです。
ストレスで心臓がドキドキするのはなぜ?
私たちは、心の病気にならないために、どのようにしてホメオスターシスを保っているのでしょうか。人がストレスにさらされたときの「不安」や「うつ」に関係する心の動きを見てみましょう。
「心」というと、心臓に手を当て、そこにあるかのように錯覚している人は多いと思いますが、感情や知能をコントロールしているのは心臓ではありません。ただし、心の動きと心臓は無関係ではないのです。
人は、強いストレスにさらされ、感情がたかぶったときには、脳と筋肉を使って物事の処理にあたります。こうしたときに心臓がドキドキするのは、筋肉や脳にたくさんの血液を供給するために、心臓を速く強く動かしているからです。そして、気管支を広げて酸素をたくさん取り入れ、血糖値を上げて、必要としている筋肉や脳に、酸素やブドウ糖を大量に送り届けます。
これを一手に引き受けているのがアドレナリンです。脳では、非常事態に対応するために、興奮させる神経伝達物質、グルタミン酸がたくさんでき、アドレナリンの仲間であるノルアドレナリンやドパミンが働き、事態に対応しようとします。
しかし、興奮させる物質であるグルタミン酸やドパミンは、必要以上に出すぎると暴走し、脳の神経細胞(ニューロン)を傷つけます。そこで、今度はその興奮を抑制するブレーキ役が必要になってきます。このブレーキ役となっているのが、抑制系の神経伝達物質であるGABA(ギヤバ)です。GABAとはアミノ酸の一種で、興奮を抑制するという意味では、脳内安定剤だと考えるとわかりやすいでしょう。
以上、抜粋終わり
この著者の浜六郎先生は、
うつ病の原因は興奮毒性による神経細胞の損傷と考えられているようです。
この先生の考え方は非常にわかりやすく、
理解しやすいと思います。
まだうつ病の確定的な機序はわかっていませんが、
この先生の意見は理に適っているように、
私は感じています。
暫くはこの先生の理論をもとに、
展開されたこの著書を勉強したいと思います。
お楽しみに!