今回は同テーマの第3弾です。
前回の続きになります。
著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。
残念ながら、いったん強い飢餓状態におちいると、ふつうに食べることだけで不足した栄養をおぎなうのは至難のわざです。ふつうに食べるだけではマイナスになってしまった栄養素をプラスにもどすのはむずかしいですし、多くの人たちが過食をするときに食べたくなるものはきまって、お菓子やパンや白米などの、精製された糖分なのです。さらに、もともと「太りたくない」という気持ちが強いこれらの人たちは、肉や卵などのタン白質食品を「太る食べもの」と思い込んでいることが多いため、過食のときにそういうものを食べようとはしません(実際には、一番太る食べものは糖分なのですが!)。しかし、精製された糖分でできた食品をいくら食べても、不足した栄養素の補給にはならないため、いつまでたっても「隠れ飢餓状態」が改善することはないのです。
つまり、過食症を治すためにおこなうべきことのひとつは、「隠れ飢餓状態を治す」ということです。具体的には治療用のサプリメントを利用する、という方法をとります。
ちをみに、間違ったダイエットの「ツケ」は、これだけではありません。まず「隠れ飢餓状態」は、体調不良の原因になります。いわゆる「不定愁訴(明らかな病気ではないのに出るいろいろな症状)」の多くは、じつは栄養失調が原因であることが多いのです。さらに、タン白質やビタミンB群・鉄などの不足は、代謝の低下をまねきます。つまり、太りやすい体になってしまう、ということです。太りたくない一心で必死に努力してきたことが、結果的に体をこわし、太りやすい体を作ってしまうとは、なんと皮肉なことなのでしょうか。正しいダイエットの方法については三章にありますので、参考にしてください。
もうひとつ、過食を起こす大きな原因と考えられるのは、低血糖症です。
先ほど述べたように、多くの患者さんが過食するときに食べたくなるものは、きまってふだん我慢しているあまいものや、ごほん、パンなどの精製された糖分です。ということは、当然それらを過食することによって、血糖値が上がったり下がったり、をくりかえす、「血糖値のジェットコースター 状態」におちいります。参考までにほかの二例の過食症患者さんのOGTTを下記に掲載しました。
脳は基本的に血糖(グルコース)しかエネルギーとして利用することができない、ということは前に書きました。さらに、脳はグルコースをためておくことができず、40秒だったらつかい切ってしまいます。脳が、必要なエネルギーを得てつねに機能し続けるためには、よどみなく流れ続ける川のように、つねに適した濃度のグルコースが脳の中に流れ込んでこないといけないわけです。血糖値がいきなり下がってしまうということは、川の流れがいきなりせき止められてしまうのと同じです。脳に必要なだけのエネルギーが入ってこなかったら、脳の機能がストップしてしまいます。
つまり、血糖値の急激な低下は、脳に非常に強い危機感をあたえます。まさしく前述したゆりさんのように、血糖値が30分で80mg/dlも 下がってしまうような場合です。あまりにも急激に血糖値が下がってしまうということば、脳へのエネルギー供給が突然ストップすることと同じですから、まさに非常事態です。この状態が長時間続くと、いずれは脳死状態となり、最悪の場合、死んでしまうかもしれません。私たちの生存本能は当然、それを回避するために、「血糖値を上げよう」とするシステムを作動させます。つまり、「食べろ!という命令スイッチが押されるわけです。これがすなわち、「お腹がすく」ということです。
もちろん低血糖症でなくても、誰でもお腹はすきます。しかし、このスイッチが入ると、多くの過食症の人は目の色が変わってしまい、尋常なお腹のすき方ではなくなってしまいます。ふつうの人が毎日感じているような、「あ〜あ、お腹すいたぁ〜」という程度の空腹感ではなく、下がりすぎた血糖値を上げて「生存する」ための信号ですから、かなり強烈です。ふつうの人の空腹を知らせる信号が、「昼食の時間を知らせる定時のチャイム」だとすると、過食症の人にとっての信号は「火事を知らせる非常用ベル」のようなものです。低血糖という非常事態をのりきるため、「食べて、食べて、食べまくれ!」という非常ベルが、脳の中でけたたましく鳴り響くわけです。
以上、抜粋終わり
今まで脳については、
糖分だけが栄養源という説でしたが、
新たにケトン体でもいいことがわかってきました。
これについては機会を改めてご紹介したいと思います。