今回は肥満・メタボリックシンドロームというテーマでお伝えします。
著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。
横山夕子さん(仮名)37才
横山さんは、外資系の商社にお勤めのシングルのキャリアウーマンです。ハードな仕事をバリバリこなして、充実した毎日をすごしています。
そんな横山さんですが、今までの洋服のホックがとまらなくなってきたので、久しぶりに体重計にのってみると、3ケ月前より4kgも体重が増えていました。ここ数年、体重や健康の管理がおろそかになっていて、徐々に体重が増えてきたことに気がついてはいたのですが、忙しさにかまけて放置していました。でも、さすがにこのままではまずいと思い、ダイエットを決意しました。
学生時代もいまと同じくらい太っていた時期がありましたが、自己流ダイエットで10kgやせた経験がありました。そのあとも、少し太ったなと思ったら、食べる量を減らせば、体重を減らすことができていたのです。
だから、「大丈夫!食べるのをちょっと我慢すれば、すぐにまたやせるはず…」と、軽く考えていました。ダイエットには自信があったのです。
やると決めたら徹底的にやる!という性格なので、1ケ月間は野菜やこんにゃくなどの低カロリーのおかずを中心に、1200キロカロリーの食事制限を自分に課しました。昼食も手作りのお弁当を会社に持って行き、徹底的に頑張りました。それなのに、1ケ月で減ったのはたったの1・2kgだったのです。
横山さんは、愕然としました。以前は食べなければやせたのに、どうしてやせないのかしら? とかなり気落ちしてしまいました。仕事は努力したらその分むくわれるのに、この1ケ月間の努力はいったいなんだったの…‥? と、一気にモチベーションが低下しました。そして、1ケ月間我慢していたビールや炭酸飲料、ラーメンにカツ丼にスイーツなど、高カロリーの食べものを食べまくってしまったのです。やっと減らした1・2kgの体重は、1日でもどってしまいました。
そればかりか、厳格な食事制限がたたったのか、体が重く、以前より疲れやすくなりました。昔は駅の階段をかけ上がっても平気だったのに、いまは動悸と息切れがするので、とてもできません。ふとした拍子に鏡を見ると、肌にハリがなく、なんだかやつれて見える自分がいます。また、食べる量は前と同じなのに、体重の増え方がどんどん加速しているような気がしました。
お父さんが糖尿病で、今はやせているけれど昔は太っていたこと、数年前に心筋梗塞になり緊急入院したことなどが、横山さんの脳裏をよぎりました。
昔のように努力してもやせないのは、年齢のせいで代謝が落ちているせいかもしれない。それだけでなく、体調も悪いし、このままの状態では際限なく太り続けて、病気になってしまうかもしれない……。こんな危機感を感じた横山さんは、「代謝を上げて、減量に成功し、健康な体をとりもどしたい!」という希望を持って、当クリニックを受診されました。
【既往歴】
大害な病第:なし 月経周期:整・月経痛あり(軽度)
【家族歴】
父:糖尿病・心筋梗塞、祖父:高血圧
【初診時現症】
身長‥155cm 体重‥60・2kg
BMI‥25・1 体脂肪率33% 血圧120/80mmHg
【診断】
まず、血糖値の平均を示すグリコアルブミンが12・7%と低く、低血糖の傾向があることがわかります。空腹時のインスリンが7.2と、基準内ではありますが高めで、中性脂肪も180mg/dあり、糖からの脂肪の合成が亢進していることを伺わせます。GOT・GPTは基準値の範囲内ですが、γ・GTPが高く、GPTがGOTより高くなっていることから、脂肪肝が疑われます。
フェリチン値はそれほど低くありません脂肪肝があると高めの数値になるため、実際には強い鉄欠乏があることが疑われます。
尿素窒素が10を下回って低いことは、タン白質の摂取量が少ないことを意味します。
体成分検査では、BMI25で体脂肪率33%と、明らかな肥満の状態でした。
【5時間糖負荷試験結果】
横山さんの5時間糖負荷試験の結果から、境界型の糖尿病の疑いがある低血糖症であることがわかりました。血糖値の乱高下が激しく、インスリン過剰分泌を伴っていました。 まず血糖の最高値が200mg/dl近くまで上昇しており、血糖値が急激に上昇しやすい状態でした。ゆえに、急上昇した血糖値を下げるため、インスリンの過剰分泌がおこなわれています。しかしそれでも血糖値をなかなか下げられないため、インスリンの分泌は持続し、180 分から240分で、やっと血糖値は143mg/dlから93mg/dlまで低下しています。血糖値の下降が1時間で50mg/dlを超えていることから、低血糖症であるといえますが、それと同時に 120分での血糖値が140mg/dlを超えているため、低血糖症であると同時に、境界型の糖尿病である可能性があります。
以上、抜粋終わり
この続きは次回です。