今回は空腹を満たすだけでは脳は満たされないというテーマでお伝えします。
著書『うつは食べ物が原因だった!』から下記抜粋します。
空腹を満たすだけでは脳は満たされない
体は「異化」と「同化」を繰り返している
私たちは通常、おなかがすけば食事をし、おいしそう、といってはメニューを選びます。この「食べる」という行為を細胞レベルにまで落とし込んで考えてみましょう。
食べることによって維持されているのは、脳や骨、内臓や血管、筋肉……など、私たちの体を構成している60兆個もの細胞です。 細胞の一つひとつは“膜”で包まれ、この膜によって細胞の形は維持され、細胞間の情報伝達をおこなっています。
この細胞を形づくつている物質は日々、入れ替わっています。その原材料になっているのが、食べ物=栄養です。そのために、良質な栄養をどんどん送り込んでやる。これがもっとも基本的な“生命を維持する”食べ方です。
風船をふくらませている下の図を見てください。風船には小さな穴があいています。風船に空気を送り込んでやりますが、穴からは空気が漏れています。でも、風船はふくらんだ状態をキープしています。
この漏れている空気が消費される栄養です。これは「異化」といい、送り込む空気が摂取する栄養。これを「同化」といいます。
この異化と同化のバランスが保たれていれば、細胞の一つひとつはいい状態で十分に機能を発揮できますが、摂取する栄養が不足してしまうと、風船はどんどんしぼんでしまいます。
やがて、異化>同化という関係になり、 摂取と消費がアンバランスになってしまいます。その結果起こってくるのが病気や老化です。当然、脳の神経細胞にもダメージはおよび、うつをはじめとする心のトラブルを抱えることになってしまうのです。
細胞に必要な絶対量が足りない
細胞レベルで見ていくと、私たちが普通に食べている栄養摂取のあり方は、果たして足りているといえるのでしょうか。
日本人の健康を管轄している厚生労働省から「日本人の食事摂取基準」が出されています。その栄養素の“基準”によれば、たとえば、ビタミンCの一日の摂取量基準は100㎎(12歳以降)とされています。
この数値を見て「一日100㎎のビタミンCをとっていれば、まずまず安心」と考えるかもしれません。
しかし、この基準を「栄養療法」の観点からいうと、そうではないのです。「摂取量が満たないと、欠乏によるさまざまな症状に見舞われる危険がある」レベルとなります。
つまり、厚生労働省が出す基準は、あくまで最低限の数値と考えます。
栄養療法で考える栄養素の“適量”は、一般にいわれている栄養摂取基準を大きく上回るものです。
それは、マイナスをゼロにするのではなく、マイナスをプラスにすることを目的とするものだからです。
では、どのくらいの栄養が必要なのか、次の項でお話ししていきましょう。
ライフスタイルに合わせて栄養も変えよう
適切な栄養素と量は個人で違う
栄養療法が考える、細胞の一つひとつが元気になり、うつを改善する栄養素の“適量”とは、いったいどのくらいなのか。
「基準はどのくらいですか?」とよく聞かれるのですが、どのくらいの量が適切な摂取量なのか、実は一概にはいえないのです。 年齢や性別、身長や体重、栄養状態はどうか、偏食があったり、日頃好んで食べているものは何か、といったことでも適切な量は変わってくるからです。
つまり、栄養素の適切な量は、個人差が大きいのです。
たとえばたんばく質。一般の成人で一日の摂取量の目安は、体重1kgあたり1〜1・ 5gが必要ですが、これは心身にトラブルがないことが前提の数値ですから、「脳の栄養不足」と見られるうつ症状があったり、何らかの理由で栄養素が急激に消耗していくといった状況におかれている場合は、この数値の限りではありません。2倍、あるいは、それ以上の数値を適量に設定しないと、とても足りないということもあります。
また、どんな仕事に就いているかによっても違いが出てきます。物を運んだり、立ち仕事が多いといった体を使う仕事に就いている人は、一般的な数値を上回る栄養素、特にたんばく質が必要になってきますし、スポーツを日常的にしているという人も、消費する量は多くなります。
デスクワークが中心の仕事をしている人はまた別の傾向が見られます。考えたり、発想したりといった「頭を使う」ことを日常的に繰り返している人は、ビタミンB群 を消耗しやすい傾向があります。意識して栄養素をとっていかないと、脳の細胞はいつか“栄養不足”を訴えはじめてしまいます。
また、成長期は通常よりも栄養素が多く必要になってきます。成長期はともすると、量を食べればいいと思われがちですが、やはり質も大切です。体はもちろん、脳の成長にも栄養は欠かせません。この時期に、栄養の供給が消費に追いついていかないとしたら……あとあと脳のトラブルが起こる可能性も高くなってしまうのです。
細胞が元気になる食べ方
自分にどのくらい栄養が必要かを知るには、まず、自らのライフスタイルを振り返ってみることが大切です。
その上で、不足しがちな栄養素を見つけ出し、適切な量を日々とる。
ライフスタイルに合わせた栄養のとり方 をしていくことが、細胞が元気になる食べ方ということになります。下記に「日本人の食事摂取基準」をもとに算出した「ライフスタイル別の栄養摂取量」をまとめましたので、参考にしてみてください。
食べ物は空腹や嗜好を満たすだけのものではありません。私たちがいかに健康で、いい人生を生きるかをも、左右するものなのです。
以上、抜粋終わり
自分が必要な栄養量は、
必ずしも基準値通りとは限らないということ。
その方の体格や生活スタイルによって、
必要量は変わるわけです。
自分の栄養の必要量はいったいどれくらいなのか、
およそ検討してみましょう。