今回は同テーマの第3弾です。
著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。
○月経前症候群とは
月経前症候群(Premenstrual Syndrome:PMS)とは、毎月の排卵後からはじまり月経後には消失するさまざまな症状を呈する症候群です。
イライラする、攻撃的になる、憂うつになる、涙もろくなる、などの精神的な症状から、乳房の張りやむくみ、腹痛、頭痛などの身体的な症状まで、じつにいろいろな症状があり、個人差も大きいのが特徴です。
宮本さんや橋口さんのように攻撃的になるタイプでは、まわりの人間関係に悪影響をおよぼすこともあり、PMSが原因で離婚した、などというケースも、最近では珍しくありません。PMSであることを自覚していない人も含めれば、かなり多くの女性がPMSに悩まされていると考えられます。
イギリスでは女性の犯罪の減刑理由のひとつとして認められているほど、社会的に認知されている PMSですが、日本では最近ようやく認知されてきた病態であり、現代医学的には今のところはっきりした原因はわかっていません。つまり、これといった治療法がない、ということです。
現在、産婦人科などでは、おもなPMSの治療として、女性ホルモンのバランスを整えることを目的に、避妊用ピルが使われています。漢方薬を処方することもありますし、うつ症状があるときには抗うつ剤などもつかわれます。これらの治療でよくなる場合もありますが、私の経験では、よくならない場合のほうが多いのです。とくに重症であればあるほどこれらの薬が効きにくく、ピルなどではかえって具合が悪くなる人もいらっしゃいます。
このやっかいなPMSの正体は、いったいなんなのでしょうか?
PMSについて考えるには、まず月経のしくみについて知る必要があります。
正常な月経のある女性は、月経の開始日からおよそ2週間後に排卵し、妊娠しなければ排卵の約2週間後につぎの月経がくる、という周期をくりかえしています(28日周期の場合)。月経がはじまってから排卵するまでの期間を「卵胞期」(基礎体温でいう低温期)、排卵してから月経がくるまでの期間を「黄体期」(基礎体温でいう高温期)といいます。
卵巣から分泌される女性ホルモンには、卵胞期と黄体期の両方で分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と、黄体期のみに分泌される「プロゲステロン(黄体ホルモン)」 の2種類があります。
PMSは黄体期にのみ症状が起こるのが特徴であり、卵胞期にも症状が起こる場合にはPMSではない、ということになります。
この黄体期に卵巣から多く分泌されるホルモンがプロゲステロンであるため、一般的には「プロゲステロンの存在」 がPMSの原因であると考えられていることが多いようです。しかし、アメリカやヨーロッパの内分泌専門医の意見はこれとはちがい、「プロゲステロンの不足」がPMSの原因のひとつであるという考え方が共通認識になっています。
たしかにこれらのホルモンバランスの乱れがPMSの原因と考えられますが、それはあくまでも原因のひとつであり、実際にはPMSはじつに多くの要因がかさなることによって引き起こされる病態であるといわれています。アメリカの研究者であるリネヤ・ハーン氏は、表に示したように、PMSの原因には非常に多くの要因があると述べています。
③の「砂糖のとりすぎ」は低血糖症にあたりますし、④の「ビタミン・ミネラルの不足」は栄養失調にあたります。これにくわえて、現代においては、「環境ホルモン」も原因のひとつになっていると考えられます。
このようにPMSの原因は単純ではなく、多くの要因が複雑にからみあっていると考えられるのです。
そしていうまでもなく、これらの中でも私がとくに主要な原因であると考えているのが、「隠れ栄養失調」と「低血糖症」です。
現代人はお腹いっぱい食べているつもりでも食品中の栄養価が低下しているため、隠れた栄養失調がある場合が多いのです。実際に、PMSの症状はビタミンやミネラルの欠乏症状と非常に似かよっています。
これらの栄養失調を、治療用のサプリメントを用いた 栄養療法で治療していくことによって、多くの場合PM Sの症状は改善します。こういった事実から、PMSの原因のひとつは栄養失調である、ということができます。
そして、低血糖症もまたPMSの病態の形成に大きくかかわっています。
何度もご説明しているように、脳細胞のエネルギー源は基本的に血糖だけなので、私たちの体はつねに血糖値を一定に保っていなければなりません。
しかし、精製された糖分、すなわちあまい食べものや飲みもの、白米や白パン、スナック菓子などの精製された糖分を多く飲んだり食べたりすることは、血糖値の急激な上昇を招いてしまいます。
以上、抜粋終わり
この続きは次回にします。