今回は同テーマの第2弾です。
著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。
- 月経前になると、泣く・怒鳴る・暴れる -
橋口京子さん(仮名)35才
橋口さんは商社にお勤めのOLさんです。
20代の頃から、月経の前になるとイライラする、落ち込む、集中力が低下する、などの症状を感じていました。ここ4年ほどで症状がひどくなり、イライラする、怒りっぽくなり同居する家族を怒鳴ってしまう、ひどいときは物を投げたり壊したりする、などの症状が起きるようになりました。そうかと思えば落ち込みもひどく、不安、悲しい気持ちになり、わけもなく泣いてしまうこともあります。その時期になると頭にもやがかかったようになり、考えがまとまらず、集中力も低下してしまいます。月経後の時期にくらべると仕事のミスが確実に増えてしまうのです。
また、月経前や月経中になると気持ちが悪くなり、ひどいと嘔吐してしまいます。月経前の腹痛や頭痛、乳房の張り、体のむくみなども前よりひどくなっているようです。
困った橋口さんはインターネットで当クリニックをみつけ、受診されました。
【既往歴】
乳腺繊維腫(経過観察のみ) 月経周期‥28日
【家族歴】
父‥糖尿病
【初診時現症】
身長:158cm 体重:55kg BMI:22
PMS/PMDDチェックリスト‥67点
【診断】
血液データでは、まず貧血の傾向があることがわかります。貧血にはいろいろな原因がありますが、子宮筋腫で出血の量が多いなどの原因を除けば、血液の材料不足、つまり栄養失調の結果であることが多いのです。橋口さんのデータからは、尿素窒素が低めであることから、タン白質の摂取量が不足していること、フェリチンが低いことから、鉄欠乏であることがわかります。これらの栄養素が長期にわたって不足すると、貧血になってしまいます。GOT・GPTのバランスは、ビタミンB群の欠乏状態があることを示唆しています。これらのデータから、複合的な栄養失調状態であると診断されました。
また、症状からは低血糖症が強く疑われました。空腹時の血糖値(グルコース)はやや低め程度ですが、グリコアルブミンが低めであること、BMIが標準であるにもかかわらず空腹時のインスリンがやや高めであることからも、低血糖症が疑われました。
BMIとは体重と身長の関係から算出した、 ヒトの肥満度をあらわす指数です。体重÷(身長×身長)という計算式で求めます。このとき 身長の単位はメートルで計算してください。B MIが22で標準、25以上だと肥満ということになります。
確定診断のため、5時間糖負荷試験をおこないました。
【5時間糖負荷試験結果】
5時間糖負荷試験の結果、血糖値の乱高下がかなり激しい反応性低血糖症ということがわかりました。まずブドウ糖を飲んで50分後の血糖値が、200mg/dl近くまで上昇している ことから、血糖値が急激に上昇しやすい体質であることがわかります。急上昇した血糖値を下げるため、インスリンが強烈に分泌されており、最高値で165μU/mlもの過剰分泌がおこなわれています。しかしそれでも血糖値をなかなか下げられないため、インスリン過剰分泌は持続し、ブドウ糖を飲んで180分から240分にかけて、 やっと血糖値が116mg/dlから51mg/dlまで低下しています。しかしこの血糖値の急降下は、1時間で65mg/dlとかなり強烈です。このため、それに対する血糖値を上げるホルモンの分泌もかなり強烈におこなわれていることが予想されます。 また、120分での血糖値が140mg/dlを超えているため、低血糖症であると同時に、境界型の糖尿病である可能性があります。
【治療】
橋口さんの場合、血糖値が急激に上がりやすい体質と考えられるため、炭水化物(糖分)は一切やめるように指導しました。おかずを中心に、低GI・高タン白・高食物繊維の食事指導をおこないました。そして食後の運動をおこなってもらうようにしました。
同時に栄養失調の改善のために、プロテイン・アミノ酸・ビタミンB群・ ビタミンC・ヘム鉄・ビタミンE・カルシウム・マグネシウム・亜鉛のサプリメントを処方しました。
【経過】
治療をはじめて2ケ月ほどで、月経前のイライラが軽くなってきました。しばらく白米を食べないでいたら、たまに食べた翌日に不安な気持ちになることに気がつきました。3ケ月後に来院したとき、PMS/PMDDチェックリストは、67点から23点に減少していました。イライラや落ち込みがまったくなくなったわけではありませんが、以前に比べるとまったく違うとのことです。
血液データの結果も改善がみられました。
まず、貧血が改善しています。これはタン白質やビタミン・ミネラルなどの血液の材料を補ったためです。尿素窒素の上昇はタン白質の摂取量が増えたことを、GOT・GPTの上昇はビタミンB群が充足しつつあることを示します。フェリチンの上昇は、貯蔵鉄の不足が改善しつつあることを示しています。
血糖値の平均を意味するグリコアルブミンは低下していますが、これは精製された糖質を控えることにより、血糖値の上昇がマイルドになり、血糖値の平均としては下がったためと考えられます。しかし空腹時のインスリン値は上昇傾向にあり、インスリン過剰分泌が増悪していることがうたが疑われます。
これ以上インスリン抵抗性(そしてそれに伴うインスリン過剰分泌)が悪化しないよう、糖分はさらに厳密に制限することが必要です。また、インスリン抵抗性を改善するには、食後の運動と、肥満の場合は減量をおこなう必要があります。
以上、抜粋終わり
女性は月経前になると
いろいろと心身の不調が出る方が多いですね。
私は栄養状態が関係していると考えています。
月経前に不調が多い人は、
一度食事内容を見直してみてください。