うつ病からの脱出ー低血糖症の症例ー

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今回は低血糖症の症例です。

著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。

  なんとなく具合が悪い

 

   ―異常に疲れる―

  沢木泉さん(仮名)34歳

沢木さんは、結婚して3年目の主婦です。

沢木さんの主訴は、とにかく疲れやすい、一時的に頑張れてもそのあと異常なほど疲れてしばらく寝込んでしまう、脱力感、めまい、極度の冷え性などでした。偏頭痛もとてもつらいということでした。

子どものころから虚弱体質で、胃腸も弱く、お腹を壊しがちで、たくさん食べても太れなかったそうです。結婚する前にはOLとして会社勤めをしていましたが、会社から帰宅するとぐったりしてしまい、なにもする気になれませんでした。休日は、なにもしないで家でゴロゴロすることが多かったとのことです。それでもかろうじて会社に行くことはできていました。

ここ1〜2年で、さらに症状が強くなってきました。たまに外出して人の多い場所に行くとひどく疲れてしまい、2〜3日は家で横になっているようになりました。家族以外の人と話すことや、電話に出ることもおっくうになり、半年前からほとんど家に引きこもっているような状態です。毎朝、目が覚めたときからすでに疲れています。朝食や昼食を食べたあとは、異常なほどの眠気が襲うので、必ずひと眠りしないといられません。冷え性なので、時間をかけてゆっくりお風呂に入りますが、長風呂をしてもまったく汗をかきません。

沢木さんがそんなふうなので、ご主人の遊びやつき合いについて行くこともできず、ご主人は休日も一人で出かけざるをえない状態です。それどころかあまりに具合が悪いと、ご主人に食事を作ってあげられないときもあります。ご主人は理解してくれているそうですが、自分としてはとても申し訳ないと思っていますし、ご主人がいないときは孤独感を感じて落ち込んでしまうそうです。

「ふつうの生活がしたい!」

これが、沢木さんの切実な願いです。

どうにかしたいと思い、数軒の病院に行ってみました。しかしどの病院でも、検査の結果は、「異常なし」でした。あまりに頭痛がひどいため、脳ドックも受けましたが、やはり異常なしとのことでした。自律神経失調症、過敏性大腸症候群と診断され、薬を飲みましたが、効果は感じませんでした。薬を飲んでも効果がないため、心療内科をすすめられました。心療内科では「うつ病」といわれましたが、薬は飲みたくなかったのでもらいませんでした。漢方薬もためしましたが、体に合わないようだったのでやめてしまいました。

心配になり、インターネットでいろいろ検索してみた結果、たしかに自分の症状は「うつ病」のようだと思いましたが、なんだか納得がいきません。困っているいろいろな症状が、心の問題からきているとは思えなかったからです。

できれば早く赤ちゃんもほしいと思っているので、薬は飲みたくありませんし、体の中から心身ともに健康になりたいと思い、当クリニックを受診されたということです。

【既往歴・月経歴】

10年前:胃炎 月経周期:35日・月経痛あり 1回流産

【家族歴】

父:高血圧・胆石

【初診時現症】

身長:162cm 体重:40kg

【診断】

沢木さんの血液データをみると、尿素窒素の低値よりタン白質の摂取不足、フェリチンが「測定不能」というほどの鉄欠乏、GOT・GPT バランスよりビタミンB群の不足、また、カルシウムの不足、亜鉛の不足など、複合的な栄養失調の状態であると考えられました。そしてその結果、貧血になっていました。また、グルコースの低値、遊離脂肪酸の上昇から、低血糖の徴候が認められたため、5時間糖負荷試験(OGTT)をおこないました。

【5時間糖負荷試験結果】

沢木さんの5時間糖負荷試験の結果、無反応性低血糖症であることがわかりました。

【治療】

これらの栄養不足を補うために、アミノ酸・ビタミンB群・ヘム鉄・ビタミンC・カルシウム・マグネシウム・亜鉛のサプリメントを処方しました。

それと同時に、あまい食べもの・飲みものをやめ、低GI(155ページ参照)・高タン白・高食物繊維の食事指導をおこないました。白米や白パンなどの精製炭水化物は量を減らし、胚芽米やライ麦パンなどを、タン白質などのおかずをしっかり食べたあとに、少量食べるよう指導しました。最低1日5回は未精製の穀物を含め、なんらかの食べものを食べるようにしてもらいました。

【経過】

栄養療法と食事療法をはじめ、3ケ月くらいはあまり効果が感じられませんでしたが、だんだん冷えや疲れなども薄紙をはがすようによくなってきたのを感じ、根気よくサプリメントと食事療法を続けました。

半年後には、以前のような異常な疲労感はなくなり、体力がついてきました。毎日の家事も以前よりきちんとこなすことができるようになりました。休日もご主人と一緒に出かけて、ゴルフやバーベキューなどに参加することができるようになりました。頭痛やめまいが起きる頻度も激減しました。以前に比べてエネルギーの度合いがまったくちがうと感じているそうです。

まだ無理をすると疲れてしまい、調子を崩すことがあるので、もう少し体調が改善したら赤ちゃんを考えようと思っているそうです。

【解説】

沢木さんの症状の多くは、低血糖症と栄養失調があいまって起きたと考えられる典型的な「エネルギー不足」の症状でした。

無反応性低血糖症とは、糖負荷検査において、ブドウ糖負荷に対して空腹時の50%以上の血糖値の上昇がみられない場合を指しますが、実際には反応していないのではなく、30分ごとの採血ではとらえられないほど血糖値の変動が素早いため、データ上反応していないようにみえるのだといわれています。実際には血糖値の細かい急変動が起きており、しかも大事なエネルギー源である血糖値がつねに低くなりやすいために、エネルギー不足の症状が起こりやすくなるのです。異常な疲労感はこのためと考えられます。

血糖値を維持するためには、精製していない炭水化物やタン白質を頻繁に摂取していただく必要があります。それによって適度な血糖値を維持し、エネルギーを維持することができるのです。

沢木さんはもともと胃腸が弱いという訴えがあり、食べても太れない、やせていることなどから、消化吸収能力が衰えていることが予想されました。このため、食事の内容が消化のよい精製された糖分にかたよりがちになり、それが低血糖の症状と栄義失調を助長させたと考えられます。実際に、サプリメントもほんとうに飲んでいただきたい量の半分くらいを飲んでいただくのがやっとでしたが、根気よく続けていただきました。

食事は、それまでは消化のよいおかゆや、手をかけずに食べられる加工食品やパンだけなどの内容が中心で、手軽に食べられるお菓子を食事がわりにすることも多かったのですが、温泉卵などの消化のよいタン白質を優先して食べていただくように指導しました。

3ケ月後の血液検査ではデータの改善がみられました。

貧血が改善し、鉄欠乏を示すフェリチン値が上昇しています。ビタミンB群の不足を示すGOT・GPTの低値も改善し、全体的に栄養状態が改善していると考えられます。

 

以上、抜粋終わり

上記症例のように、

なんとなく自分の症状が似ていると感じたら、

低血糖症の疑いが考えられますので、

どうかすぐに確認してください。

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