今回のテーマはうつ病キャンペーンとSRIについてです。
著書『読んでやめる精神の薬』から下記抜粋します。
うつ病キャンペーンとSRI
「うつは心のかぜ」と、気軽に受診することが推奨され、精神科ではなく、心療内科が多数できたことで受診しやすくなったこともあり、うつ病の受診率が上がってきました。本来、うつ病というのは大うつ病を指し、日常的に憂うつな気分があるだけではうつ病とはいえないのですが、抗うつ剤の使用は、単なるうつ状態にも使えるような工夫がされています。
というのは、添付文書で、それぞれの薬剤が何に効くのかを指定している「効能又は効果」の欄の記載のし方に工夫がされているのです。どのSRIにも書かれているのが、「うつ病・うつ状態」です。「大うつ病」という限定はありません。そのために、たとえば、以前は「抑うつ神経症」と呼ばれ、うつ病とは考えられていなかったような軽いうつ状態にも、抗うつ剤が使えることになっているのです。
セロトニンを補う薬剤として、第一章でSRI(セロトニン再取り込み阻害剤)を紹介しましたが、ここでは、このSRIについて少し詳しく見ていきましょう。
読者のみなさんは、SRIを見て、「あれ?Sが一つ少ない。間違いでは?」と思ったかもしれませんが、そうではありません。SSRIは選択的セロトニン再取り込み阻害剤と通称され、「セロトニン以外には作用しない、害の少ないもの」というイメージを持たせています。試験管内では確かにセロトニンへの作用が強いのですが、生きた体に作用すると、ちっとも「選択的」ではないのです。なぜならば、セロトニンではなく、ドパミンも増やすからです。そこで、私は、単にSRI(セロトニン再取り込み阻害剤)としています。
SRIの日本での承認は、一九九九年五月にフルボキサミン(商品名・デブロメール、ルボックス)が最初に登場し、次いで二〇〇〇年一一月にパロキセチン(商品名・パキシル)が承認を受けました。以降、〇六年七月にはセルトラリン(商品名・ジェイゾロフト)が、二年四月にはエスシタロプラム(商品名・レクサプロ)が登場しています。
次に、抗うつ剤の市場規模の推移を見てみましょう。SRIが登場するまでの抗うつ剤は、三環系抗うつ剤と呼ばれるものが主流でしたが、これらは安価だったため、薬剤売り上げ上位に登場することはありませんでした。
しかし、十数年前に登場したSRI、なかでもパキシルは、販売開始の実質的初年である〇一年に一〇〇億円の売り上げを突破、その後もほぼ毎年、一〇〇億円前後の伸びを示し、〇六年にはついに単独で五〇〇億円の市場規模に到達しました。他のSRIが承認されたこともあり、〇七年の五一〇億円をピークに減少に転じていますが、一〇年でもなお、約三九〇億円を記録しています。〇八年には、すべての抗うつ剤の市場規模は、出荷ベース(企業から出荷するときの価格)で約八八五億円に達していますので、薬価基準では一〇〇〇億円をはるかに超えています。〇九年の出荷額は八九〇億円で横ばい、一〇年は八五〇億円と少し減少しました。一〇年に少し減ったのは後述するように、〇九年に厚生労働省が他害行為などに関する警告を出したためと思われます。実際、厚労省が三年ごとに実施している患者調査の結果では、〇八年に比較して、ほとんどの年齢でうつ病の推定患者数は減少しています(159頁図4参照)。
一方、患者数はどのように変化したのでしょうか。SRI系の抗うつ剤の登場とともに、製薬企業の主導でうつ病キャンペーンが行なわれ、患者の掘り起こしにマスメディアも大きな役割を担うことになりました。その結果、〇八年に「うつ病」との診断を受けた愚者(躁うつ病を含む)総数は、一九九九年以前(九六年と九九年の平均四四万人)に比べて、約-一・四倍(一〇四万人)に増加しました。SRIは基本的には抗うつ剤ですが、本格的な「うつ病」、つまり「大うつ病」だけでなく、先にも述べたように、軽い「うつ状態」にも使用が認められています。何か病気にかかったときには気分が憂うつになりやすいものですが、そうした憂うつな気分にも「うつ病」の診断がつけられて、SRIが用いられているのでしょう。また、パニック障害や強迫性障害、社会不安障害などにも次々と適応が認められています。さらには適応外の症状にまで用いられるようになってきたことも、処方される機会が大幅に増えた要因の一つといえるでしょう。
以上、抜粋終わり
製薬業界も産業ですので、
当然利益優先です。
これは企業としては当たり前です。
まずそのことを念頭に入れておかなければなりません。
ですから企業として売り込みをかけるのは当たり前のことです。
しかし問題はそこに企業倫理が働いているかどうかです。
売るためなら何をしても良いのでしょうか?
製薬会社は資本力があるので、
たえず芸能人を使って、
企業イメージをよくするために、
イメージ広告をしています。
そのため我々はいつの間にか良いイメージを植え付けられています。
いかにも薬が病気を治しているような宣伝をしていますが、
良く宣伝をみてください。
症状についての機序は説明していますが、
症状の原因は何も説明していません。
つまりその症状に特化して効くように作っているわけですが、
治しているわけではないのです。
治るとは言ってませんよね。
症状に効果があるように見せています。
実にうまい宣伝広告だと思います。
薬とは何度でも言いますが、
病気を治すものではなくて、
症状を抑えるものです。
そして薬には副作用があります。
そのことをもう一度きちんと認識してください。