うつ病からの脱出ーうつー

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今回はうつについてです。

著書『なぜあなたは食べすぎてしまうのか 低血糖症という病』から下記抜粋します。

-やる気が起きない-

小林健次さん(仮名) 42 圏軸易

 

小林さんは、商社にお勤めのサラリーマンです。

生来とてもきちんとした性格で、責任感に厚く、仕事一筋の充実した毎日を送っていました。上司からは一目置かれ、部下からも慕われ、残業も接待もなんのその、仕事が自分の生きがい、と豪語するほどの仕事人間でした。

しかし5年ほど前から、体力の衰えを感じるようになりました。まず朝起きるのがとてもつらくなりました。十分に睡眠をとっても、朝に疲れがとれていないのです。以前のように目が覚めたらばと飛び起きて出かけていく、という元気が出ません。

仕華中にも疲れを感じはじめました。体がだるいので、いまひとつ仕事に集中できません。

なにか重大な病気でもあるのではと思い、人間ドックに入りましたが、とくに異常はみつかりませんでした。会社の産業医に、ストレスのせいではないかといわれましたが、自分としてはとくにこれといった心当たりはありませんでした。

そしてだんだん、仕事にもやる気が起きなくなってきました。気力がなくなり、気分も落ち込みがちになり、ふさぎこむようになってしまいました。かと思うと、ときどきイライラすることもあります。眠りも浅く、ときどき動悸がします。起きていると体がだるいので、すぐに横になりたくなります。次第に、仕事を休むことも増えました。体調の変化が起きてからの5年間で、体重が20kgも増えてしまいました。

心療内科を受診すると、「うつ病」と診断されました。診断を受けて、小林さんはなんとなくほっとしたそうです。

抗うつ剤と抗不安薬、睡眠導入剤を処方され、きちんと飲んでいましたが、週の半分は横になっいるという状態が続きました。この2年間は休職と復職をくりかえし、現在は休職中です。

小林さんとしては、あせる気持ちもあり、一日も早くうつ病を克服して仕事に復帰しだいと思っていたのですが、心も体もまったくついていかない状態でした。

このまま薬を飲み続けていても、「治る気がしない」ということで、一念発起して、当クリニックを受診されました。

【既往歴】

喘息 痛風 胆のう炎

【家族歴】

祖父:胃がん

【初診時現症】

身長:182cm 体重:99・2kg

BMI:29 血圧:136/90mmHg

【診断】

初診時の採血で空腹時血糖が200mg/dlを超えており、過去のデータでも高血糖が確認されたため、すでに糖尿病を発症している状態と考えられました。肥満とインスリンの過剰分泌がみられることから、低血糖症からメタポリックシンドローム、そして糖尿病へと移行した状態だと考えられました(136ページ参照)。糖尿病であることが確定的と考えられたため、5時間糖負稀試験はしませんでした。

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ヘモグロビンの上昇より血液濃縮があり、コレステロール・中性脂肪も高いことから脂質異常 あり、血栓症のリスクが高い状態でした。また、GOT・GPT・γ-GTP・フェリチン等の上昇より、脂肪肝であると考えられました。

【治療】

小林さんの症状の多くは、「エネルギー不足」によると考えられるものでした。

心身ともに健康に生きていくためのエネルギーを作り出すには多くの栄養素が必要です。低血糖症やメタポリックシンドロームでは、これらのエネルギーを作るための栄養素が不足してしまいます。小林さんの場合、脂肪肝のためこれらの数値データから読みとることは困難でしたが、相当の不足があると考えられました。これらの栄養素を補給するために、プロテイン・アミノ酸・ビタミンB群・ナイアシン(ビタミンB3)・ビタミンC・ヘム鉄・ビタミンB・カルシウム・マグネシウム・のサプリメントを処方しました。うつ症状の原因に、脳内でのセロトニン(神経伝達物質)の合成低下がありますが、セロトニンを作るためには、タン白質・ビタミンB6・マグネシウムが必要です。ナイアシン(ビタミンB3)もセロトニンを合成するのに必要な栄養素です。

また、高血糖・インスリン抵抗性にもとづくインスリン過剰分泌の治療のために、糖質制限・高タン白・高食物繊維を中心とするよう食事指導をおこないました。調子がいいときにはなるべくウォーキングを、可能であれば筋トレをおこなってもらうようにしました。

【経過】

もともとまじめな性格の小林さんなので、食事療法をきっちりおこない、サプリメントも毎日欠かさず飲んでくれました。おっくうなときもありましたが、体力の許すかぎり、歩くようにしました。

そうするうちに、だんだんと薄紙をはがすように、症状が軽くなってきました。体重が、2ケ月で12kg減りました。眠りにつくのも楽になってきました。 6ケ月後には16kg体重が減り、疲労感も軽くなりました。うつ症状も軽減し、1年後にはフルタイムの仕事に復帰しました。まだ完全復帰とは言えませんが、体調をみながら仕事の量をコントロールしています。

血液データでは、肝機能障害や血液濃縮、脂質異常症も改善した。血糖値は、高血糖ではなくなりましたが、逆に低血糖が見られるようになりました。これはまだインスリン過剰分泌が完全には改善していないためと考えられます。栄養素の補給法を継続し、もう少し体重コントロールができると、症状はさらに改善するでしょう。

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低血糖症とメタボリックシンドローム、糖尿病の関係について「肥満・メタボリックシンドローム」の項にくわしく書いてありますのでお読みください。

低血糖症とうつ症状

現代では、うつ病の患者さんが増えているといわれており、社会問題となっています。うつ症状の原因にはいろいろなものがあると考えられますが、低血糖症で起こりやすい症状のひとつが、うつ症状です。

低血糖症では、下がった血糖値を上げるために、さまざまなホルモンを分泌せざるをえなくなります。中でもアドレナリンやノルアドレナリンなどのカテコールアミンは、脳内での神経伝達物質としてもはたらきます。これらのホルモンが異常に分泌されることによって、脳内の神経伝達物質のアンバランスが起こり、これがうつ症状を含め、さまざまな精神症状の原因になると考えられています。

また、セロトニンという神経伝達物質が低下するとうつ症状が起こることがわかっていますが、セロトニンは脳内でトリプトファン(アミノ酸の一種)をもとに、ビタミンB6・マグネシウなどを利用して合成されます。これらの反応の補酵素として、鉄や亜鉛、ビタミンB3なども必要です。

タン白賃やビタミンB群、マグネシウムや鉄や亜鉛などの不足は、脳内での神経伝達物質の合成低下を招くため、うつ症状の原因となります。低血糖症やメタポリックシンドローム、肥満などではこれらの栄養素の必要量が増えるため、不足が起こりやすくなります。

低血糖症でうつ症状を伴っている場合、まず血糖値を安定させること、そしてこれらの栄襲素の不足を是正することが必要となります。

うつ症状の原因は多彩であり、低血糖症や栄養失調以外にも、甲状腺機能低下症や副腎疲労が原因となっている場合もあれば、食物アレルギーが関与している場合もあります。高名な精神料医で分子栄養学の権威であるカナダのエイブラム・ホッファー博士は、うつの75%には食物アレルギーが関与しているとも述べています。

症状に応じて適切な検査をおこない、可能なかぎり原因を究明し、原因に即した治療をすることが必要です。

 

以上、抜粋終わり

うつ病の中に

低血糖症が潜んでいる

可能性があることは、

これまで何度も指摘してきました。

ゆえにうつ病の方は、

まず自分の食事内容を見直し、

低血糖症であるかどうかを

確認する必要があります。

そのうえで自分が受けるべき治療を

検討してください。

 

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