うつ病からの脱出ー「SSRI」が本当は「SRI」である理由ー

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今回は「SSRI」が本当は「SRI」である理由というテーマをお伝えします。

著書『読んでやめる精神の薬』から下記抜粋します。

SSRI」が本当は「SRI」である理由

脳内の神経線維の末端からは、別の神経細胞に刺激を伝えるために、ドパミンやノルアドレナリン、セロトニン〈これらをまとめてモノアミン類という)が分泌されます。神経線維の末端と、別の神経細胞とをつないでいる部位をシナプスとよび、わずかな隙間が空いています。その隙間に分泌され、別の神経に刺激を伝える働きを終えたそれらモノアミン類は、分泌された神経末端に再び取り込まれます。 SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)の「再取り込み」というのは、このことを指して「再取り込み」と名付けられています。「再取り込み」が阻害されると、シナプス内のモノアミン類の高い濃度が持続するため、減少しているこれらモノアミン類を増やして、うつ病に効果がある、と理論的に考えられているのです。

ところで、モノアミン類が再度神経の末端に取り込まれるためには、それぞれの物質の運搬係が、その役割を担います。これをトランスポーター(運び屋)といいます。ドパミンの運び屋、ノルアドレナリンの運び屋、セロトニンの運び屋…などです。三環系抗うつ剤は主にノルアドレナリン運び屋の働きを妨害し、SRIはセロトニン運び屋の働きを妨害します。

試験管内で、ノルアドレナリン運び屋やドパミン運び屋は妨害せず、セロトニン運び屋だけを妨害することができる物質は、「選択的セロトニン再取り込み阻害剤」と呼ばれますが、もともとは「選択的」という語はついていなかったようです。試験管内ではセロトニン運び屋に選択的であっても、生きた動物を使うと、セロトニンだけでなく、ドパミンをも増やしているために、実際には、「選択的」とはいえないのです。

しかし、パキシルのメーカー(当時は、スミスクライン・ビーチャム、後にグラクソと合併してGSK:グラクソ・スミスクライン)は、「選択的」という語を付加して、(SSRI)という略語をつくりました。この余分の作用を持たない「クリーン」なイメージを強調する戦略が功を奏してか、急速に販売を伸ばし、他のものも「選択的セロトニン再取り込み阻害剤」(SSRI)という名前で呼ばれるようになりました。

このあたりの事情については、抗うつ剤の批判的検討で定評のある英国の二人が、その著書に詳しく記載しています。チャールズ・メダワー氏(医療消費者組織「ソーシャル・オーディット」代表)の「暴走するクスリ? 抗うつ剤と善意の陰謀」(吉田驚天、浜六郎他訳、NPO法人医薬ビジランスセンター〔薬のチェック〕発行、二〇〇五年)と精神薬理学学者のデイビッド・ヒーリー教授の『LET THEM EAT PROZAC』(翻訳書に『抗うつ薬の功罪-SSRI論争と訴訟」(田島治監修、谷垣暁美訳、みすず書房発行、二〇〇五年)です。

なお、「セロトニン再取り込み阻害剤」として初めて特許を得たのは、一九七二年に得たジメリジン、ついで七四年に得たフルオキセチン(商品名・プロザック)であったそうです。前者は八〇年に販売され、医療に用いられましたが、八二年にギランバレー症候群という神経難病を起こすことがわかり、市場から消えました。次いで医療に用いられるようになったのは、八三年、スイスでフルボキサミン(商品名・ルボックス)の販売が始まってからです。これは、日本でルボックス、デブロメールという商品名で販売される九九年の一六年も前でした。次いでプロザック(日本では販売されていない)の販売が八八年に始まり、海外では現在も販売されています。

その次にシタロプラムが八九年にデンマークで、米国では九八年に販売開始になりました(日本では シタロプラム中の活性成分のみを抜き出したエスシタロプラムをレクサプロとの商品名で二〇一一年から販売開始)。サートラリンはゾロフトとの商品名で一九九二年に北米で販売が開始されました(日本では同じものがジェイゾロフトとして二〇〇六年に販売開始)。

パロキセチンは一九九一年にセロキサツトという商品名で英国で、次いでパキシルという商品名で米国で販売が開始されました。パロキセチンは、SSRIという名前を付けたこと、短時間作用型のために効力を実感されやすいこと、うつ病だけでなく、パニック障害という、なじみやすい病名に有効との戦略が成功して、多用されています。 現在でもプロザックとバロキセチン、それにゾロフトが「3大SSRI」(SRI)といわれています。

以上、抜粋終わり

薬の作用の過程で、

あるものだけに特定して機能を停止することなど、

人間にはできないのです。

だから全身に作用し、

副作用となって体にあらわれるわけです。

人間の身体は薬にとって、

そんなに都合よくはできていないのです。

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