今日は第3弾です。
著書『精神科は今日も、やりたい放題』から下記抜粋します。
入院なんかしなきゃよかった
最後に一例を提示する。このケースは『精神疾患・発達障害に効く漢方薬』に掲載したケースである。題名は「入院なんかしなきゃよかった」だが、現在の状況を踏まえてどう考えるべきだろうか?
*当時一五歳の女性(二〇一一年で一七歳)
幼少時は双子ということもあってかおとなしくて、友達の輪の中に積極的に入って遊ぶのは苦手で偏食の多い子だった。手のかからない子だったが、姉の面倒を見るくらいのしっかりもの。
中学生になると、ますます真面目で成績もトップクラスになり、友達からも先生からも信頼を得ていたが、中学校二年生の後半、男子生徒数人から「勉強ができて、クールぶってるところがムカつく」といって、ひどいいじめに遭った。中学校三年生になってからは不登校になっていった。
その後、なんとか保健室登校を続けていたが、だんだんと眠れなくなり、ついには不登校になってしまった。
「独りで家にいると、だれかがいるような気がして怖い」と訴えるようになり、親は児童精神科を標榜している個人クリニックを受診させた。
「統合失調症の初期段階(初期統合失調症)」と診断され、ショックながら母親は治療に専念させようと考えたが、父親はどうも腑に落ちない。だれでもありうることではないかと考えていたからだ。
【最も飲んでいたときの処方内容】(一日量)
・リスパタール(抗精神病薬/リスペリドン)……………・四㎎
・ベゲタミンB(睡眠薬・抗精神病薬/合剤)・……………一錠
・アキネトン (抗パーキンソン病薬/ビペリデン)………・二㎎
・デパケン(抗てんかん薬/バルブロ酸ナトリウム)…三〇〇㎎
・ピレチア(抗ヒスタミン薬)……………………・……二五㎎
・ロヒプノール(睡眠薬/フルニトラゼパム)……………・二㎎
・ベンザリン(睡眠薬/ニトラゼパム)……………五㎎(頓服)
医師は、少しでも状態が良くないことを伝えると、三〜七日くらいで薬を変えた。結局、通院していた一カ月半の間で、ほとんど全種類の非定型抗精神病薬を投薬された。ジプレキサという薬を飲んだとき、女性は「この薬を飲むとダメ。イライラする!」と訴え、そのイライラはずっと治まらないまま。この医師に不信感と不快感を抱き、前もって予約していた大学病院に転院した。
ところがそこでも「断定はできませんが、統合失調症の可能性がかなりあると思います」と言われ、抗精神病薬の処方が続いた。女性の状態は一カ月もしないうちに悪化して、姉や妹に暴力を振るったり、包丁や刃物で自分を傷つけようとしたり、幻覚や幻聴を訴えて毎日暴れるようになってしまった。大学病院にこれ以上通院しても良くなっていく見込みがないと判断した家族は、担当医の勧めにしたがい県内最大の入院施設を持つ公立の病院に入院させた。
しかしその大病院担当医は、当時の三カ月前まで、先の公立の大学病院で研修医だった。入院して二日目に家族が面会へ行くと、虚ろな目をしてロボットのように歩く女性の姿。自分の洋服もロッカーにしまえない。家族は病院の担当医に面談を申し込んで事情を聞こうとするが、聞く耳は持たない。その後、新聞に出た精神薬の記事から私のクリニックにたどりついた。
現在多量の薬をすべてやめ、漢方のみを服用している。通信制の高校に通い大学を目指しているが、内気な感じはあるものの大きな問題は一切ない。
しかし、『精神疾患・発達障害に効く漢方薬』の中で児童精神科医が下した診断は統合失調症、また私は最初アスベルガー症候辞と診断した。
今を踏まえた結果はどうか?今患者には人並みの頑固さと対人の苦手さだけしかない。つまりそれは精神医学にのっとってさえアスベルガー症候群ではないということであり、私の判断もまた過剰診断だったということだ。この子はただの内気な少女でしかなかった。
発達障害という撒き餌
一時期、精神科セカンドオピニオン活動においては、「誤診」という言葉が大流行りした。まるで自分たちが正しくて、相手(精神科医)がダメであるかのような印象を与える。言葉なので流行ったのだと分析しているが、本来どんな精神科医の診断にも正しいものなど一つとしてない。
アスベルガー症候群を規定する科学的根拠は何もなく、ただ行動や思考の傾向によって判断するのみである。こんないい加減な診断体系が他にあるだろうか?
こんな診断体系があるからこそ薬害や虐待や差別が起こる。逆に疾病利益も発生するのである。疾病利益の例としては、たとえば働きたくない人たちが自閉症の基準さえ満たしていないにもかかわらず、自らをアスベルガーだと名乗ったりするケースが多い。働きたくない理由として都合がいいからだ。
他にも自分の主張を認めてはしいがために、発達障害という立場を利用する人間も多い。自ら発達障害だと名乗りながら堂々と講演までする人間がいるが、自己優遇もはなはだしい。本来の定義にのっとれば、講演などできないくらい先天的に社会適応力がなく、強迫性も強いからこそ発達障害なのである。自閉症協会の人間が自分を自閉症だと名乗りながら講演しているなど、もはや笑い話にしかならない。
現在多くの精神科医が以前より発達障害の中身を理解するようになってきた。そしてその中身が長期的に儲けをもたらすこと、自分たちの罪(=精神医学のごまかし)をかき消す作用があること、親と共同で好きなように患者をコントロールできること、発達障害という概念そのものが、なんの病気でもない人を精神科医に引き込んでくる「最高の餌」になることを理解し始めたのである。
これは後述する初期統合失調症よりタチが悪い。多くの患者や家族が、私の子どもは発達障害でしょうかと精神科医の門をたたくようになってきている。その大きすぎる罪をこの概念を広めた者たちが認めることは決してないであろう。詐欺にかけた犯人が詐欺ではないと否認し続けるように……。
これらをすべて総合していえることは、発達障害と呼ばれる行動形態を考えるとき、この概念を広く適用することは、決してあってはならない愚行の極みだということである。この概念はもっと狭めねばならない。昔でいうカナー型自閉症や重症のものだけを自閉症と呼び、その他のものを発達障害の範疇に収めることは、まさに詐欺の温床となるのでやってはいけないのだ。そしていわゆる本当の自閉症だけを福祉と教育にうまく組み込むこと、それ以外に医療や福祉としてできることはないのである。
以上、抜粋終わり
何度も言うが、
薬では病気は治らない。
薬は症状を抑えるものであって、
治すのはその人自身の自然治癒力だからである。
しかし精神疾患は病理の機序が未だにわかっていないので、
すべて仮説による治療である。
だから症状に対しても本当に有効なのかどうかはわからない。
ほとんどの場合、
副作用の影響で逆に悪くなっていく。
それをよく知った上で、
どう活用すべきかを自分で判断してください。