うつ病からの脱出ーパキシルについて 1ー

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今回のテーマはパキシルです。

著書『読んでやめる精神の薬』から下記抜粋します。

パキシルによる他害行為の報告例

二〇〇九年五月八日に開催された厚生労勘省(以下、厚労省)の薬事・食品衛生審議会医薬品安全対策部会に提出された資料には、〇九年三月末までに発生したSRI服用の他害行為などの例が多数報告されています。

それによると、パキシルを使用して傷害などの他害行為があった副作用の報告例が二六件、傷害などの他害行為につながる可能性のあった副作用の報告例が四五件、他害行為のない副作用の報告例が一〇二件ありました。

他害行為がないと分類された一〇二件の中にも、衝動性、衝動行為、激越、錯乱、妄想性障害、昏迷、アカシジア、精神病性障害、自傷行為、自殺念慮、自殺企図、自殺既遂、攻撃性、躁病、せん妻など、かなり激しい例が少なくありません。

これらの中から、典型的と思われる例をいくつか紹介しておきます。

1「他害行為があった」例に分類されている二六件より抜粋

三〇代女性。「うつ病」との病名でパキシルが用いられ、電話で主治医を罵り、自殺するといった。母親に対して皆殺しにしてやるといい、刃物で自分や母親を切る。灯油を撒いて火を点け、襖を被って物を投げるなどした。副作用名は「激越」。

二〇代男性。「うつ状態」でパキシルが用いられ、けんかをし、他人の首を刀で刺し、警察に逮捕された。副作用名は「躁病」。

四〇代男性。「うつ病」との病名でパキシルが用いられ、鉄製のバールで妻の頭を殴打。全治一カ月の重傷を負わせ、傷害罪で逮捕された。副作用名は「攻撃性」。

2「 他害行為につながる可能性」のある例に分類されている四五件より抜粋

二〇代男性。「強迫性障害」の病名でパキシルが用いられ、家族に「殺してやる」と包丁をふりかざし、窓ガラスを割るなどの行為があった。副作用名は「敵意」。

四〇代男性。「躁うつ病」との病名でパキシルが用いられ、人を殺したくなるという症状が現れた。副作用名は「殺人念慮」。

七〇代女性。THA手術(人工股関節置換術)後の痛みに対して、パキシルが用いられたところ、攻撃的な言動や態度が現れた。副作用名は「激越」。

四〇代男性。「うつ病」の病名でパキシルが用いられ、一〇〇メートル先を曲がる車に対し、クラクションを鳴らした。副作用名は「激越」「攻撃性」「衝動行為」など。

 

パキンルは大人よりも子どもで攻撃性が高まる

では、どのSRIが暴力・他害行為を起こしやすいのでしょうか。前項で述べたように、〇九年三月末日までの副作用報告から抽出した「敵意/攻撃性」に該当し、パロキセチン、フルポキサミン、セルトラリン、ミルナシプランが使用されていた合計二六八件の内訳はそれぞれ、一七三件、六五件、一五件、一五件でした。また、実際に傷害などの他害行為があった例は、それぞれ二六件、七件、二件、四件(ミルナシプランによる例は他害行為につながる可能性のあった例)でした。

起こしやすさを比較するためには、これらの薬剤がどれくらい使われているのかを推定する必要があります。そこで、 SRIとSNRI(セ ロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)の〇八年までの推定市場規模と薬価から計算した推定年間使用者数と、これら副作用報告数を比較して計算すると、パキシルは、他の抗うつ剤に比べて、敵意/攻撃性が二・六倍、他害行為は四倍も危険度が高いことが分かりました。

この敵意/攻撃性について、もう少し詳しく見ていきましょう。英国の、うつ病に対する承認を得るための一連の第-相試験(第一シリーズI相試験)では、「激越/焦燥」が、プラセボ群六五人中〇人に対して、パキシル群では一一〇人中一八人に生じていました。

同じく英国で実施された、健康成人男性ボランティアを対象としたパキシルの適応拡大のための第-相試験一六件(第二シリーズI相試験)の集計データでは、プラセボ群一三八人中〇人に対し、パキシル群では二七一人中三人に「敵意/攻撃性」が生じていました。

これら「激越/焦燥」と「敵意/攻撃性」という二種類の有害事象を「激越/攻撃性」としてまとめて総合解析すると、パキシルを服用することで激越/攻撃性を増す危険度は一三・六倍で、統計学的に有意でした。これは、フィッシャーの正確法という方法を用いて計算した場合、パキシルが「激越/敵意/攻撃性」を起こしやすいとの結論が間違う確率は、万に一つもない(P<0・0001)ということを意味しています。 「激越/焦燥」と「敵意/攻撃性」をまとめた理由は、第一シリーズでは激越/焦燥が報告されて「敵意/攻撃性」の項目がなく、第二シリーズでは逆に「敵意/攻撃性」だけで「激越/焦燥」が報告されていなかったこと、「激越/焦燥」は容易に攻撃性につながる症状で、敵意/攻撃性に近いといえるからです。また、両者はまとめて報告されることも多く、実際、厚労省の報告でも、攻撃性の報告例の中には、医師が「激越」として報告した例が含まれています(上記参照)。

客観的なデータをもう少し追ってみましょう。小児ならびに成人を対象としたプラセボ対照ランダム化比較試験の総合的な分析では、プラセボに比べ、敵意/攻撃性がパキシル群で有意に高頻度となることが記載されています。敵意/攻撃性を示した患者は、プラセボ群六四五五人中二〇人(〇・三一%)、パキシル群九二一九人中六〇人(〇・六五%)で、危険度は二・一倍となっています。

また、パキシルを服用したことで敵意/攻撃性が高まる危険度は、大人よりも子どもにおいて顕著となっています。小児・思春期の大うつ病患者に対してSRIを用いた臨床試験で、敵意または激越が出現するリスクが比較されていますが、パキシルの相対危険は、七・七と突出して大きいのです。相対危険が三・〇を超えている薬剤はパキシルのみでした。

さらに、パキシルのメーカーであるGSK(グラクソ・スミスクライン)社がインターネット上で公表した臨床試験データのうち、小児に関してまとめた表に基づいて、年齢別に敵意/攻撃性と、自殺に関連した症状の発生状況を検討しました。

臨床試験の対象は七〜一八歳ですが、これを一二歳未満、二一〜一五歳、一六歳以上の三つのカテゴリーに分けた結果を見ると、プラセボ群では、暴力行為も自殺も、年齢による差はほとんど認められませんでした。ところが、パキシル群では、

一二歳未満で七・三%

一二〜一五歳で三・〇%

一六歳以上で一・〇%

と、年齢が低いほど敵意/攻撃性が現れる傾向が明瞭に認められています。一方、自殺には逆の傾向が出ています。

一二歳未満で〇・五%、

一二〜一五歳で四・〇%、

一六歳以上で五・四%

と、年齢が高くなるほど強くなる傾向を示しています。

諸外国では、小児への大うつ病、不安障害、強迫性障害に用いた六件のランダム化比較試験が実施されています。いずれの試験でも、小児への大うつ病、不安障害、強迫性障害への効果は証明されず、パキシルは 「無効」でしたが、害については、いくつかの試験で単独でも自殺及び攻撃性が増大していました。

私が総合解析した結果でも、効果は証明されず「無効」でしたが、確実に自殺および攻撃性の害がありました。自殺はプラセボの約二・五倍、激越もしくは攻撃性の害は約七・七倍増加していました。「効かない」のに、害だけは確実にあるのです。

外国のデータですでにこれだけの結果が出ているので、日本の子どもで、いい結果が出ることはまず期待できません。ところが、〇九年三月から、日本の一九の施設が参加して、一八歳未満(七〜一七歳)の子どもを対象にした臨床試験が行なわれました。

効果はないのに害だけは確実に出る - このような状況で臨床試験を実施することは、きわめて非倫理的であり、中止すべきと考え、機会があるごとに訴えてきました。しかし、試験は二年二月まで行なわれ、五六人(プラセボ群二七人、パキシル群二九人)が試験に組み入れられたところで中止となりました。六五人ずつ選ぶ予定でしたが、約半数を選んだところで中止となったのです。中止理由については明らかにされていませんが、海外の臨床試験でことごとく無効であったこと、逆に害は個々の試験でも有意に出ることがあったことなどを考慮すると、有効との見通しが立たなくなったか、または害が明瞭にあったか、あるいは、試験対象の人が集まらなかったか、あるいはそれらの組み合わせであったと思われます。

この臨床試験についてGSK社は、精神科医からの要望が強いために計画した、としています。これが本当なら、本来子どもの健康な精神を保つことに責任を持つべき精神科医(とくに小児精神科医)として、あるまじき行為です。

なお、GSK社がサルを用いて行なった動物実験では、人間と同じ用量(サルにおける四㎎/kgは、血中濃度で人間と同程度)を与えましたが、二回行なった実験で四匹中二匹が死亡しました。しかし、GSK社は、二匹で行なって二匹とも生存、としました。

その理由は、死亡した二匹は一回日の実験で死亡したのですが、原因が明らかにされないまま実験をやり直し、最初と同じ量が投与された後の実験で使用した二匹は死亡しなかったとして、一〇〇%生存(二/二)としたのです。

しかし、やり直しの実験でも攻撃性が認められていることから考えると、最初の実験で死亡した二匹は、攻撃性が高まったことが原因で死亡したのではないか、との疑いがぬぐいきれません。

以上、抜粋終わり

パキシルについても有効なのかどうか、

上記を参考にして服用を考えてください。

 

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