今日は、何故低血糖症が発見当時のアメリカで無視されてしまったのかを、引き続き著書『心の病いと低血糖症』から下記抜粋して説明します。
低血糖症という病気の存在を初めて世に示したのは、米国のシエール・ハリスである。1924年、彼の「高インスリン症とインスリン機能異常症」という論文が、米国医学会雑誌に掲載された。そして、この論文こそが前述の、ガイランドが目にしたものだった。実は、この前年、インスリンを発見したカナダの医学者バンディングとマクラウドが、ノーベル生理学・医学賞を受賞している。インスリンは、血糖値の恒常性維持の上で重要なホルモンである。血液中に含まれる血糖は全身のエネルギー源になるので、これが低下すれば体全体の働きが損なわれる。とくに脳のダメージは大きく、精神疾患の要因になる危険性が高いのである。一方、高血糖症に起因する代表的な病気が糖尿病で、いわば低インスリン症ともいえる。
インスリン・ホルモンの発見と抽出の成功は、糖尿病薬としてのインスリンの製造・販売を盛んにし、製薬産業に大きな利益をもたらした。糖尿病患者は、いやおうなしに買わざるを得ず、1920年代には何百万人もがインスリンに頼って余生を過ごすことになった。
しかし薬剤のインスリンには、重大な副作用があった。治療薬のマニュアルには、低血糖が挙げられ、次の症状が列記されている。
《脱力感、倦怠感、高度の空腹感、冷汗、顔面蒼白、動悸、振戦、頭痛、めまい、嘔気、知覚異常、不安、興奮、神経過敏、集中力低下、精神障害、痙攣、意識障害(意識混濁、昏睡)など。》
薬剤のみならず、生命活動の一環として膵臓から分泌されるインスリンでも、過剰に分泌されれば、同様の症状が起きることが考えられる。
当時の医学界では、低血糖が起こる原因として次の二つのケースしか認識されていなかった。一つは、糖尿病治療のためのインスリンの過剰注射。もう一つは、膵臓の腫瘍によるインスリンの過剰分泌。これに対して、ハリスは低インスリン症と正反対の症例、つまり高インスリン症を発見したと主張する論文を発表したのである。彼は、糖尿病患者でもなく、インスリン投与を受けたこともない多くの人々に、“インスリン・ショック”の症状が見られたことに注目した。これは、インスリンを過剰投与したときに血糖値が急激に落ち込み、発作など心身に異常が起きる、という現象である。
インスリン投与を受けなくとも体内で“インスリン・ショック”が起きるケースがあることを発見したハリスの業績は本来、ノーベル賞に値するほどのものだったが、逆に彼は攻撃されたり、無視をされたのである。当時の医療体制にとって、“不都合な”発見だったからである。
ハリスが、低血糖症あるいはインスリン分泌過剰症の治療に有効としたのは、患者に対して、「白砂糖、キャンデー、コーヒー、清涼飲料の摂取をやめる自己管理の提案」をすることだった。この提案は、医師の立場を失わせるだけでなく、製薬産業や食品産業に巨大な損失をもたらすものだった。その意向を受けた医師たちが、彼を攻撃したのも当然である。
さらに、低血糖症を理解できない精神科医や外科医たちの多くは、ハリスの発見が外部にもれることを恐れ、医学界あげてすさまじい批判を展開した。そしてハリスの業績は、アメリカの医学界では四半世紀にわたって無視されてきたのである。1949年、米国医学会は彼の業績を認め、メダルを授与した。
わが国では、ハリス論文発表から85年たった現在も、彼の業績を知る医師は極めてまれである。伝統的な日本食を食事習慣としていた日本人に低血糖症は無縁で、医学界があまり関心を持つ必要がなかったのかもしれない。
だが、今や、欧米流の食事習慣が一般的になり、「米ばなれ、砂糖とりすぎ」の日本人が増加する一方である。心身の健康維持のためには、低血糖症への理解を深め、食事習慣の改善を図らねばならない。
以上抜粋終わり
お分かりいただけたと思いますが、つまり利益を優先していたので、世紀の発見が抹殺されてしまったということです。
この世界では未だに利益優先の社会のため、大企業や権力を有するものにとって、利益に反することは、抹殺し、封印されてしまう風潮があります。
医療業界も然り、薬漬けにする医療が本当にいい医療なのでしょうか?
特に精神疾患領域については、薬物療法が中心です。
うつ病も同じです。
あなたが飲まれている薬は本当にあなたを治すための薬なのですか?
もう一度あなたが飲んでいる薬について、よく調べてください。
本当に飲む必要があるのかどうなのか?
特に副作用について、私たちはほとんど無頓着です。
飲むにあたっては、最も重要なところですので、よく確認し、納得したうえで服用してください。
とにかく我々はもっとよく勉強する必要があると思います。
タイトルから脱線していましましたが、重要なことですので、もっと深く認識していただきたいと思います。
次回はさとうの摂り過ぎが、なぜ血糖値をさげるのかを説明します。
お楽しみに。